啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版 Amazon ジョセフ・ヒースはカナダ人であるけれど、『啓蒙思想2.0』における彼の問題意識は、ティーパーティーに代表されるように近年のアメリカで不合理で反動的な右派の運動が盛んになっていることだ(原著は2014年なのでトランプの当選以前である。そのため、『啓蒙思想2.0』ではまず「保守」と対峙したうえで、伝統的な保守思想の利点も認めつつ現代における問題点を指摘しながら、「理性」の必要性を改めて提唱する、という流れで議論がすすむ。つまり、『啓蒙思想2.0』では、最終的には左派的・リベラリズム的な主張が支持されることになるのだ。 とはいえ、ヒースは左派の反合理主義に対しても容赦がない。第8章「ワインと血を滴らせて」で行われている議論は数年前にもこのブログでちょっと取り上げたが、改めて紹介しよう*1。 この