【承前】 その部屋からは、芝生の中庭が見えた。幸福そうに見える車椅子を含めた数人と、白衣の二人が日を浴びている。質問は続いていた。「ところであなたは大学生だという事ですが、大学では何を学んでいるのですか」。答える。「美術です」。「すると油絵か何かを…」。「いいえ」。「彫刻とか」。「いいえ」。そこで言葉に窮した。「空間芸術」と言えば良いのか。いや違う。「環境芸術」と言えば良いのか。それも違う。「総合芸術」と言えば良いのか。それでは阿呆丸出しだ。しかし考えてもみれば、ここから先を説明する事は、この場に於いては全く無意味なものに感じられた。この一連の質問は、あなたの個人的な好奇心から発せられているものではないのか。 言ったところで理解はされないだろう事について、極めていい加減な返答をした。それが正鵠を射ている表現であるかどうかを、以後検証するつもりも無い相手に対してはそれで良いと思った。何よりこ