二〇二二年に第三十五回小説すばる新人賞を受賞した『楊花(ヤンファ)の歌』でデビューを果たした青波杏さん。待望の第二作『日月潭(にちげつたん)の朱い花』は、現代の台湾に生きる女性二人が、古い日記に隠された真実を探る物語。謎と日常、過去の歴史と現在が交わる中で見えてくるものとは。 聞き手・構成=瀧井朝世/撮影=大槻志穂 ――新作『日月潭の朱い花』は、台湾を舞台に現在と過去が交錯していく話です。どんな着想だったのですか。 最初は古道具屋で見つけたトランクの中から少女が書いた日記が出てくる、というくらいのアイデアでした。しかもその時イメージした舞台は中国の廈門(アモイ)でした。 ――青波さんは以前、実際に廈門で日本語教師をされていましたよね。『楊花の歌』も、一九四一年の廈門での暗殺事件の前後から始まり、後半は台湾が舞台となる物語でした。今回、廈門から台北(タイペイ)に舞台を変えたのはどうしてだった