その昔、日本で海外旅行が、特に団体ツアーに人気が集まり始めた頃、旅先に日本人がかならず持っていくものとして「醤油」が上がっていたと聞く。わたしが初めて海外に出たのは1980年代中頃で、それも行先が中国だったのでさすがにそれはしなかったけれど、「持っていくように」と忠告してくれたご年配の方はいた。出かける先がほぼ中華圏、あるいはアジア圏であるわたしは、お土産としてはともかく、日本の調味料を持っていったことがない。 でも、旅先でなんどか、強烈にその話を思い出したことはある。 そのうち1回は、初めての大韓航空を利用したときだった。機内食が配られてすぐのこと。ちょうど通路側に座っていたわたしは、通路を前方から歩いていくる客室乗務員に向かって、両側からにゅーっとたくさんの腕がにゅーっと突き出されているのを目にした。乗務員は小さなチューブに入ったコチュジャンを配っていたのだ。それを求める人たちの手とい