国内最大の自動車部品メーカー、デンソーが全社を挙げてソフト開発の力を磨き始めている。アジャイル開発の最新手法を取り入れ、新たなデジタルサービスの構築を狙う。自動運転やコネクテッドカーなどクルマとITの融合が進むなか、次の時代も自動車製造のティア1(1次サプライヤー)で居続けるための挑戦だ。 「満席です。サテライト会場に回ってください」。2018年4月、愛知県刈谷市のデンソー本社にある300人収容のホールは社員でごった返していた。社内イベント「技術研究討論会」の開催日である。 テーマはモノ作りではない。題して「シリコンバレー流ソフトウエア開発の取り組み」。壇上に立ったのは、米グーグルなどで活躍した著名ソフトウエア開発者の及川卓也氏だ。及川氏は2018年1月にデンソーの技術顧問に就任した。ソフト関連の知見や人脈を期待され、三顧の礼でデンソーに迎え入れられた。 この日は大勢の一般社員を前に話す初