「時間ってなに?」 とは、小学生になるかならないかの私が、祖父の友人に質問したことである。祖父のもとをだれかが訪ねるのは珍しいことだった。「このおじいさんは何でも知ってるから、なんでも聞いてごらんなさい」。祖父は京大出の化学博士で、その友人もどこかの教授かなにかだったのではないか。 腑に落ちる答えを得た覚えはない。 大学を中退して、ニートになった。そのころ「ニート」なんて言葉はなかった。ただ、引きこもっているうちに「ひきこもり」という言葉は出てきた。家族で飯を食っていて、テレビでひきこもり特集などやられると気まずくなったものだ。気まずくなるだけだったが。 そんな中である「ひきこもり」が、「これはカレンダーのない生活だ」だったか、「カレンダーのない人生だ」だったか、そんなことを言った。まったくそのとおりだと思った。カレンダーは失われた。 以後、紆余曲折あって、一家も離散し、おれもひきこもって
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