バリカンで髪を切りはじめて十年が過ぎた。美容院に行かなくなって十年とも言える。セルフカット十周年だ。こんなものはだれも祝ってくれないので自分で祝うしかない。この十年は試行錯誤の日々でもあった。簡単に振り返ってみたい。 そもそものきっかけは、ほとんど人に会わない生活をはじめたことだった。在宅のバイトのようなもので最低限の収入を得ていた。ネットのやりとりだけで仕事が完結する。まったく人に会う必要がない。すると頭髪の意味合いが変わった。 日常に人間関係がある場合、頭髪とは文化である。しかし周囲から人が消えたとき、それは庭の雑草と大差のないものに変わる。伸びると邪魔なので切る。それだけのものになる。 十年前、近所のホームセンターでバリカンを購入した。美容院に行くのが面倒になったからだ。もっとも、この時に買ったバリカンは現在は使っていない。そのため、メーカーや型番も分からない。申し訳ない。ただ、ひと