誰もがパソコンやスマホから発信できる昨今、著名人の過去の問題行動が明るみに出され、社会的に糾弾される事例が国内外で増えている。森本あんり・東京女子大学長と武田徹・専修大教授が、この「キャンセル・カルチャー」の背景について議論した――。 (『中央公論』2022年5月号より抜粋) 有事は寛容性を喪失させる 森本 ロシアがウクライナに侵攻し、一般市民を攻撃しています。とんでもない暴挙ですが、歴史を振り返ると、その道筋も当然だったようにみえてきます。冷戦が終わり、共産主義圏が崩壊して以降、西側諸国は、自由と民主主義の勝利だと思い込んでいた。ところがロシアは、西側とは全く別のナショナリズムや地政学で動いていたのです。だからウクライナ侵攻を、世界中からどれだけ非難されても動じない。その論理を理解不能と切り捨てるのではなく、彼らがなぜそう考えるのか、問い直す必要があると思います。 武田 その通りです。プ