「ジャズ」の枠に収まらない表現力で世界を魅了した黒人女性シンガー 既にこの世を去ってしまった伝説的なミュージシャンやシンガーの多くがそうであるように、ニーナ・シモンの名前から連想するイメージは、リスナーの世代によって、あるいはその文化的な背景によって、人それぞれだろう。1987年、シャネルが自社の代名詞的香水ブランド「No.5」のCMソングに採用(ちなみに監督は『エイリアン』を手掛けたリドリー・スコット)したことをきっかけに、“My Baby Just Cares For Me”(1958年発売のデビューアルバム収録曲)が世界中のチャートを駆け上がった現象をリアルタイムで目撃している自分にとって、ニーナ・シモンの最初のイメージは「とびっきりオシャレなジャズシンガー」だった。彼女がジャズだけでなく、1950年代アメリカンポップス、ソウルミュージック、R&Bを横断するとてつもないスケールと、そ