第36回 手品とインタフェース 2009年10月14日 (これまでの増井俊之の「界面潮流」はこちら) 奇術や手品は人間の錯覚や勘違いを最大限に利用したエンターテインメントです。人間は錯覚や勘違いの固まりですから、突然何かが変化しても気付かなかったり/慣れたものを見逃すことが多かったり/手品の達人は観客の目前でも易々とイリュージョンを見せることができ、観客はそれを見て驚き楽しむことができます。人間の知覚能力や認識能力がたいしたものではないという事実は多くの場合は不利だと思われますが、そのおかげで未熟な技術でも実用的に使えて都合が良いこともあります。テレビや映画は1秒間に30枚以下しか画面を表示していないにもかかわらず、動画がなめらかに動くように見えるのは人間の知覚能力が低いおかげといえるでしょう。 勘違いをしやすいという点は、逆に考えるとイリュージョンを見る能力があるという長所だと考えること