1989年生まれ。立命館大学文学部英米文学専攻卒業(学士)、同志社大学グローバル・スタディーズ研究科卒業(修士)。 著書に『21世紀の道徳──学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える』(晶文社)。「デビット・ライス(Davit Rice)」名義で、倫理学・動物の権利運動・ポリティカルコレクトネス・ジェンダー論などに関する文章や書評・映画評論などを発表している。 晶文社スラップ・ブック連載:「動物と人間のあいだ」 ブログ:「道徳的動物日記」「the★映画日記」
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ここ数年、日本のシティ・ポップの海外人気が続いている。竹内まりや「Plastic Love」の再評価に端を発し、山下達郎や大貫妙子などの日本のポップスの名曲が世界各国の若い音楽ファンに受け入れられている。そんな話題を耳にしたことのある人もいるだろう。 が、コロナ禍以降の大きく変動する音楽シーンの中で、シティ・ポップのリバイバル・ブームも以前とは違う様相を呈するようになってきている。 少し前だったら「都内のレコードショップで70年代や80年代のアナログ盤を買い求める外国人観光客」の姿がブームの象徴として取り上げられることも多かった。しかし、今はTikTokで若い世代に発見された楽曲がSpotifyのバイラルチャートを駆け上がり、新たなアンセムとしてストリーミングサービスで人気を呼ぶ現象が生まれているのである。 その代表が、松原みきのデビュー曲「真夜中のドア〜stay with me」だ。19
7年前から指摘してきたのに 今回、朝日新聞・峯村健司さんらの報道で明らかになった、⽇本国内で最も利⽤されているSNS「LINE」の個⼈情報が、⽇本国外である韓国のサーバーに暗号化されていない無防備状態格納されており、しかも再委託先の中国企業などがアクセス可能な状態だったという事件は、第一級の情報漏洩事案である可能性があり、安全保障上、極めて重大な損失を日本の国家・社会に与えかねないものだと認識しています。 筆者は、LINEが設立に関与した一般財団法人情報法制研究所の事務局次長と上席研究員を兼任し、また、日本の個人情報保護の枠組みについて研究を行ってきました。 本件LINEの事件についても知り得る立場にあり、2014年ごろからこの問題について警鐘を鳴らしてきたつもりではありましたが、今回の一連の報道でようやく広く国民の知るところとなり問題視された件については、安堵と同時に忸怩たる気持ちを抱き
戦後日本をグイグイと引っ張り、何百万、何千万もの国民を食わせてきた基幹産業が見る影もない。時代は流れ、「日本製」の文字から往時の輝きはとうに失われた。現場ではいったい、何が起きているのか。 火が消え、人が消えた 「ねえちゃん、いいちこもう一杯くれんか!」 汗と油で顔を光らせた男たちが、煤けた作業着姿で大声をあげる。1600℃の高温で大量の鉄鉱石を溶かし、月に数百万トンの鉄を錬成する「高炉」の周辺は、気温50℃にも達する。 三交代制で働く彼らは、仕事が終わると昼夜となく街の角打ちに繰り出し、イワシを糠味噌で炊いた塩辛い「ぬかだき」を肴に焼酎を呷るのだった―。 鉄の街・福岡県北九州市ではかつて、そんな風景がそこかしこで見られた。昔を知る同地の日本製鉄OBが言う。 「製鉄労働者を乗せて九州東部を縦断する日豊本線の車両はいつも混み合っていて、床一面タバコの焦げ跡だらけでした。 小倉の繁華街には飲み
なぜ社会は「男性」を競争に駆り立て、搾取するのか…? その進化論的な理由 文化進化論とジェンダー・ギャップ 意図せざる帰結としての性差別 現代の社会における様々な領域に男女格差が存在していることは、疑いもない。たとえば世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダー・ギャップ指数」では、各国における男性と女性との間の格差が「ジェンダー間の経済的参加度および機会」「教育達成度」「健康と生存」「政治的エンパワーメント」という四種類の指標に基づいて計算されてランク付けされている。日本は2015年以降は毎年100位以下であり、先進国のなかでも最下位で悪名高い。 では、具体的には、日本における男女格差とはどの領域で発生しているのか? 四つの指標を詳細に見てみると、教育と健康に関しては、男女格差はほとんど存在しないことがわかる。「ジェンダー・ギャップ指数2020」によると、総合ランキング一位のアイスラ
自分の仕事には意味がない。世のため人のためにもなっていない。コロナ禍の中で、そんな事実にふと気づいてしまった人たちがいる。見渡せば、世間はそんな「クソどうでもいい仕事」ばかりで……。 どうでもいい管理職 こんな仕事のどこに意味があるんだ。なぜこんな無駄なことをしているんだ……。コロナ禍は、ある種の人々に、そんな残酷な真実を突き付けてしまった。 「管理職としての私の主な業務は、週3回ある会議に出席し、販売関係のデータを部下から集めて各部門に商品の売れ行きなどを通達、助言を行うというものです。自分ではマーケティングの最前線で指揮を執っているつもりでしたが、単なる思い込みに過ぎなかった」 そう語るのは千葉県在住で大手飲料メーカー社員の富田健太さん(仮名・50代)である。 「コロナ禍によって定例の会議がなくなってしまった。すると、販売データやその分析などは各部門長が部下の担当者とオンラインで直接や
コロナが世界を蹂躙して経済が停滞しオリンピックどころではなくなっているが、コロナ前から先進国で最も凋落が著しかったのがホスト国である我らが日本で、コロナ禍も加わって“斜陽”が止まらなくなっている。 家計調査を見ても、財務省の平均給与と国民負担率を見ても落ちるところまで落ちた感があるが、インバウンドも期待できないのに無理してオリンピックを開催したら一段と貧しくなってしまうのではないか。いったい誰が日本をここまで貧しくしてしまったのだろうか。流通ストラテジストで『アパレルの終焉と再生』の著者、小島健輔氏が「本当の理由」を解説する――。 家計消費支出に見る「日本人の貧困化」 総務省家計調査(二人以上世帯)の20年平均消費支出が前年から5.3%も減少し、「被覆及び履物」支出は18.9%、「教養娯楽」支出は同18.6%も減少したが、コロナ禍ばかりが要因ではなく、その前から日本は貧しくなっていた。 2
2010年代に商業的成功を収めた『転スラ』 伏瀬『転生したらスライムだった件』は、著者が丸山くがね『オーバーロード』の影響を受けて「小説家になろう」で2013年2月から連載し、2014年5月からマイクロマガジン社より書籍版が刊行され、2015年3月から始まったマンガ版は18年10月からのTVアニメ化以降、講談社の決算を左右するレベルの爆発的な売上となった。 20年9月には出版物の累計発行部数は2000万を超え、2010年代にスタートしたウェブ小説/ライトノベルの中でもっとも商業的に成功した作品のひとつとなった。 ラノベ業界の地殻変動の象徴 伏瀬は「なろう」に投稿する以前は、電撃小説大賞に送ろうと思っていたという。 電撃小説大賞は上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』などを輩出し(正確には上遠野は前身の電撃ゲーム小説大賞出身)、電撃文庫を文庫で刊行されるライトノベルレーベルの覇者に押し上げるこ
大阪の中心地に訪れていた不動産バブルが終焉を迎えつつある。 インバウンド需要の爆増や大阪万博開催決定を背景に、近年では市内を中心にホテル建設ラッシュが相次いだ。北区、中央区、浪速区に西区、天王寺区といったエリアの訪日外国人客における人気と地価上昇率は比例し、5年ほど前から今年1月頃までは地価は上昇の一途を辿っていったのだ。 リーマンショックを超える「別次元」の地価下落 大阪府が発行する『地価だより』(20年3月号)の地価公示前年の平均変動率をみると、市内は住宅地、商業地、工業地で昨年の水準を上回っている。特に商業地は全体で2.7%の上昇をみせており、変動率1位の宗右衛門町の住友商事心斎橋ビルは実に44.8%の上昇を記録していた。 ミナミは全国でも有数のインバウンドの恩恵を受けていた地域の1つであり、この流れを牽引していた。だが、世界中に拡大した新型コロナウイルスの影響で訪日観光客は途絶え、
警察が摘発に本腰を入れている 「いま、新宿・歌舞伎町を凌ぐ勢いで、秋葉原に悪質なぼったくり店が急増しています。そのため、緊急事態宣言が解除されて以降、警察内部で重点的に取り締まる動きが本格化しているのです」(警視庁関係者) 今年7月、千代田区は秋葉原一帯を「客引き行為等防止重点地区」に指定。連日、管轄の万世橋警察署の警察官が深夜の立哨を行うなど、摘発に本腰を入れている。 「実際にキャッチが集まる裏通りを進むと、様々なコスチュームに扮した女の子たちが道を塞いでいる。数m背後には、秋葉原には似つかわしくない、首までタトゥーを入れた色黒のスウェット姿の男性の姿も。彼らがぼったくりグループです。 彼らの店に入ると、高額なボトルの注文をせがまれ、ドリンク1杯で帰ろうとしても席代などを理由に数万〜十数万円を請求されてしまいます」(風俗産業に詳しいルポライターの國友公司氏) そもそも秋葉原は山手線や総武
ベトナムの新鋭、アッシュ・メイフェア監督による映画『第三夫人と髪飾り』(10月11日より公開中)。スパイク・リーが脚本に惚れ込み、トロント国際映画祭やサンセバスチャン国際映画祭など世界中の数々の映画賞を受賞した傑作だ。 舞台は19世紀の北ベトナム。富豪のもとに嫁いだ14歳の第三夫人と、彼女を取り巻く女たちの愛、哀しみ、葛藤が、神秘的な秘境の中で叙情的かつ官能的に描かれている。 本作はベトナムで公開されるや否や、主演女優の年齢(撮影当時13歳)や作品のテーマに批判が集中。「官能的」ではあれど、主演女優による直接的なセックスシーンはない。国による正式な上映許可も下りていた。にもかかわらず、主演女優とその家族はSNSで大バッシングを受けることとなった。 5年もの月日をかけてようやく完成した映画だったが、女優と家族を守るため、監督は公開4日後に上映中止にすることを決定した。まるで、「あいちトリエン
安倍と目も合わせようとしなかった 9月14日午後、グランドプリンスホテル新高輪の大宴会場で開かれた自民党の両院議員総会。事前の予想通り大差で新総裁に選出された菅義偉は、緊張した面持ちで壇上に上がり、短い挨拶を行った。 「新総裁に選出をいただきました菅義偉であります。どうぞよろしくお願い申し上げます」 冒頭、会場に向かって頭を下げた菅が、次に口にしたのは首相・安倍晋三への感謝の言葉だった。 「自民党総裁として約8年、総理大臣として7年8カ月にわたって日本のリーダーとして国家国民のために大変なご尽力をいただきました安倍総理に心から感謝を申し上げます」 だがこう述べた菅は、斜め後ろに座っていた安倍本人を一瞥すらせず、安倍に背を向けたまま会場に向かって深々と頭を下げた。続いて「一緒に万雷の拍手を安倍総理にお願いします」と述べると、ようやく体を横に向けて拍手をしたが、その間、互いに目を合わせようとも
「雪国まいたけ」が再上場 マイタケ、エリンギ、ブナシメジ等の生産販売、及びキノコの加工食品の生産販売で知られる「雪国まいたけ」が、9月17日、東証一部に再上場される。 2015年6月の上場廃止から約5年ぶりの上場で、筆頭株主の米投資ファンド「ベインキャピタル」が保有株を売り出し、既に49%の株式を持つ精米卸の老舗「神明」が、一部を引き受け、連結子会社とする。 雪国まいたけの創業者は大平喜信氏。新潟県六日町(現・南魚沼市)の貧しい農家に生まれ、中卒後、職を転々とした後、太もやしの栽培に取り組み、人工栽培が難しいといわれるマイタケに挑んで成功、83年、35歳で雪国まいたけを創業した。 南魚沼といえばコシヒカリで知られるが、雪国まいたけが生産するキノコは、ブランド米に次ぐヒット商品となり、南魚沼市の経済と雇用に貢献した。売上高約510億円、従業員数約1100人で、新潟県有数の企業規模を誇る。 た
社会学者・小熊英二氏が今年7月に出した新著『日本社会のしくみ』は、日本の雇用のあり方を分析することで、「日本のしくみ」を解明している。なかでもとりわけ興味深いのが、日本社会の根幹にある「正社員」という存在。日本の正社員は一般に考えられているよりはるかに「特殊な身分」だ。なぜ正社員という身分は生まれたのか。そしてこれからその「身分」はどうなっていくのか。小熊氏が語る。 日本ではなぜ「専門性」が重視されないのか ――『日本社会のしくみ』では、日本の雇用慣行の分析が中心に据えられています。なぜ雇用慣行について書こうと思ったのですか? 日本社会の全体像を解き明かすことを目指す過程で、日本の雇用慣行、特に「大企業正社員の雇用慣行」が、教育や福祉なども含めた社会全体のありようを規定していることに気がついたからです。 雇用慣行は社会のベースになっていますが、欧米では労働者の賃金を決める基準は職種ごとの専
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性から依頼を受け、医師が薬物を投与して殺害し逮捕された事件で、京都地検は事件に関わった2名の医師を8月13日、嘱託殺人罪で起訴した。報道によればALSの女性は以前から強く安楽死を希望しており、2018年12月にツイッターで被告の医師と知り合ってから、やりとりを重ねていたという。 医師の一人はクリニックを開業しており、メンタルケアや緩和ケアに力をいれ、ホスピスの運営も手掛けていた。2名の医師は、共著で高齢者の安楽死を積極的に推奨するような電子書籍(書名はあえて記さない)を発行していたが、この本には以下のようなくだりがあると報じられている。 《認知症で家族を長年泣かせてきた老人、ギャンブルで借金を重ねて妻や子供を不幸に陥れた老人。そんな「今すぐ死んでほしい」といわれる老人を、証拠を残さず、共犯者もいらず、スコップや大掛かりな設備もなしに消せる方法がある。医療に紛
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