過激な事件現場を直接的に写すことで賛否両論があった報道写真家の死と、加害者と被害者の真意をめぐる謎解き話。 監督は橋本一。狭い廊下を逃げまどう通り魔の逮捕劇をワンカットの長回しで演出していたところが印象的。作中写真も、ドラマを支えられるくらいには、良い絵にできていた。 さて、通り魔事件で多くの群集が被害者に目を向けなかったという導入は、西村京太郎の名作を思い出すところ。その題材が動機にかかわっていると推理して中盤に犯人が明らかになるのだが、実際には事件の発端ではなかったことも物語が進むにつれてわかっていく。 傍観者の群れは、あくまで写真家が選んだテーマの一つにすぎなかった。後半に入ると写真家が別のテーマを表現した作品が登場し、事件を報道することの意義や異議が様々な角度から物語られていく。先に群集心理という説明をし、つまり群集に対して個人の責任を強く問うことが難しいという心理的な伏線もあった