■大都会かディズニーランドか 米アップルのタブレット型コンピューター「iPad(アイパッド)」が日本で発売された翌週の日曜午後7時半、銀座通りの「アップルストア」の入り口からは大勢の人があふれていた。 出張で東京に着いたばかりの私はこの光景を眺めながら、「アップルストア」の歴史を思いだしていた。経営危機のアップルに戻った創業者スティーブ・ジョブズは2001年、世界中の主要都市に自社製品を扱う豪華な店舗「アップルストア」を直営する構想を発表した。携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」が大ヒットする前だから、直販で売るものはパソコンしかなかった。価格競争で利幅が薄くなる一方のパソコンは、量販店かネット経由で売るしかないという常識にあらがう「狂気の戦略」だった。しかしその背景には、販売に至るまで「顧客の経験をすべてコントロールしたい」というジョブズの強い意志があったのだ。 前回の本欄で述べ