明治31年七月~九月『萬朝報』に連載された、政治家・財界人・学者たちがいかに妾を囲っているかを暴露した記事を集めた本。 「靖国神社宮司加茂水穂は日本橋区村松町四十八番地藤吉妹松本やそ(三十一)を妾とし一時麹町区一番町四十七番地に囲い置きたれども今は三番町十番地に移す」 といった記事が五百例以上も羅列されていて圧巻。これを見てると、小間使いが手ごめにされて妾となるパターンが非常に多い。しかも10代の。今なら淫行・セクハラで即失脚だ。僧侶の蓄妾も数多い。 政治家の女性スキャンダルは今では致命的だが、当時は妾を囲うのは当たり前だった。涙香は、紳士面した男達が影では欲望丸出しに妾を囲っている状況を恥ずかしく思い、広く暴露することによって彼等に反省を促す意図があったようだ(もちろん『萬朝報』の売上増も狙ってのこと)。現在の週刊誌の原点とも言えそうだが、女性の地位向上という涙香の主張を反映してもいた。