科学部デスク 保坂直紀 なんだか腹から力が抜けた。若いころ科学を志し、新聞社の科学部に籍をおいて20年。知らず知らずのうちに、科学に強い思い入れをもってしまったのかもしれない。ああ、科学者だって人の子だなあ、という当たり前のことに思い当たって、恥ずかしながら自分の力みに気づいたのだ。 鳩山政権下で実施された昨年の事業仕分け。1995年に施行された科学技術基本法を背景に破格の優遇を受けてきた科学にも、メスが入った。世界最高の計算速度を目指すスーパーコンピューターの開発が、その象徴だった。国に金がない以上、どこかを削って工面しなければならない。科学だって聖域ではないという当然のことを、あらためて国民に印象付けた。 このような科学予算の危機に対して、科学者たちは猛反発した。圧巻は、ノーベル賞受賞者らによる反対声明の発表だろう。11月末の東京大学で横一列に並んだのは、江崎玲於奈、利根川進、野依良治