<< 前編はこちら 魔法の世紀に生まれた「ポスト真実」 2015年、2016年を占う上で『魔法の世紀』という本を上梓した。魔法の世紀という言葉は、マスメディア型の情報伝達系が世界を支配した20世紀を「映像の世紀」と呼び、その対比として、コンピュータによってあらゆるものが「ブラックボックス化」=「魔術化」した今世紀の姿を、アメリカの社会批評家モリス・バーマンの『世界の再魔術化』という本になぞらえて「魔法の世紀」と呼んだものだ。 魔術化は、人が動かす社会システムにも大きな影響をもたらす。人はものの仕組みに無頓着になっていき、例えば近年のSNSに関する調査結果によれば人は真実よりもデマのほうを好んでシェアする傾向にあるし、SNS上のコミュニティの中で一人一人が好んだ世界を好んだように生きている。このような感覚を拙著では「貧者のVR」と呼んだ。一人一人はそれが現実だと思って生きてはいるものの、タイ