ぼくにとってクリスマスは、キリストの誕生ではなく処刑を愉しむ日だった。 今年はまだ、ターゲットが決まらない。表計算ソフトを起動する。遅い。つい頭を掻き毟る。バラバラと剥離した頭皮がキーボードの隙間に吸い込まれていく。そういえば、もう四日も風呂に入っていない。【キリスト候補_2008】というファイルを開く。そこにはただ一行、自分の名前だけが書き込まれている。思えば、高校を卒業してもう十七年になる。あのときはクリスマスを迎えるまでに候補者が軽くひとクラス分は並んだ。中からひとりだけを選ぶのが困難なくらいだった。大学に入り、就職し、退職し、引き籠ってからは、もう、新しい名前が追加されることはなくなった。 十七年は長い。遠方に引っ越した同級生も多い。こんな田舎町にいては将来など高が知れている。使い回しのキリスト候補リストは櫛の歯が欠けるようにポロポロとその数を減らしていった。もちろん、キリスト役と