映画『ジョーカー』が世界的な大ヒットを記録している。ヴェネツィア国際映画祭ではアメコミ映画として初の金獅子賞を受賞しており、アカデミー賞では過去最多の16部門ノミネートを果たした。『バットマン』の悪役として知られるジョーカーが、いかにして悪のカリスマとなったのか。この映画ではその前史が描かれている。 本作はすでに識者によってさまざまな切り口で語られているが、私はこれを一種の「芸人映画」として楽しんだ。芸人志望の男を主人公に据えて、笑いとは何か、人を笑わせるとはどういうことなのか、笑われるのと笑わせるのはどう違うのかなど、笑いの本質を掘り下げるような作品だと思ったのだ。本稿ではそのような視点から、作品の内容をひも解いていきたい。 主人公の夢は「プロのコメディアン」 【以下、映画「ジョーカー」のネタバレを含みます】 主人公は、ピエロの姿で大道芸人として働くアーサー・フレック。病気の母の介護をし