「ヨードチンキ」,最初に薬用に使用されたのは,消毒・殺菌用ではなくて,甲状腺疾患の対症薬として,内服薬だったという話を伺った事があります.本当でしょうか? フランスのクールトワ(Bernard Courtois, 1777-1838)が,家業であった硝石製造(当時は戦争が絶えなかったので,弾薬用の硝石の需要は莫大なものでありました)の原料である草木灰の入手困難を克服しようと,ノルマンディーやブルターニュあたりの海岸で大量に入手可能な海藻灰を使って硝石〔実はこれからだと,得られる物はチリ硝石(硝酸ナトリウム)になるはずなのですが〕を生産するプロジェクトを立ち上げようとして,海藻灰に濃い硫酸を注いだところ鮮やかな紫色の蒸気を発生する事に気づき,これがヨウ素の発見となったのです.1811年のことでした. クールトワは若い頃陸軍の医学校で薬学を学んでいたので,この紫色の気体となる結晶は水には不溶だ