最近になって彼女との電話が口論になることが多くなった。不安定というか、やつあたりというか、はげしい口調でなにもかもを否定的に言う。 「あんな上司の下じゃ、きっと、いつかつぶされる、私のこと嫌ってるし」 「子どもなんて考えられない、こんな世の中で産めるわけない」 ぼくはそれをなだめながら聞き、いやでもさ、と口を挟む。 「それすごく先のはなしだし、今から心配しても仕方ないし、第一まだ」 「ヒステリックな女との結婚なんて考えられない」 「ちがうよ、でも、それ今決めなければいけないの?」 電話口の彼女の声はエスカレートしつめ寄るように鋭くなって、徐々に矛先がぼくにむかうようになると、口論になるのはほぼ間違いなくなる。いや、それよりも前に、あまりに否定的な見解にお説教じみた言葉を投げかけ始めてしまうこともある。彼女よりぼくの方がだいぶ年長だから、その言いようが子どもじみていて、甘い考えに見えるからだ