玉手 「格差原理」というのは、これまたざっくり言えば、「どのような不平等なら、人々は許容できるか」を考えるさいの基準です。ロールズは、もっとも恵まれない人の利益になる不平等であれば許容できるとします。 やや分かりづらい言い方かもしれませんが、たとえば、ともに年収1000万円のAとBという人物がいて、Aが1500万円に、Bが500万円になる場合、恵まれないBさんが利益を得ていないので許容することはできません。 しかし、Aが1500万円に、Bが1200万円になる場合には、もっとも恵まれていないBが利益を得ているので、以前にくらべて不平等になってはいるけれど、この不平等は許容される——そのように考えていただくとわかりやすいと思います(下の図を参照)。 先ほどの「競争」に引き付ければ、「弱肉強食的な競争」は、もっとも恵まれない人が利益を得られないという形の格差を生み出す競争です。これは格差原理の条