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日本でよく聞かれるのが、キリスト教にせよイスラム教にせよ、「一神教はどうしても不寛容だ」という意見である。それと対になっているのが、「日本は多神教だから寛容だ」という説で、これは床屋談義だけでなく学問的な見解としても論じられることがある。 その発端になったのは、「農耕由来の多神教」と「砂漠由来の一神教」という対比を論じた和辻哲郎である。彼の『風土』論(1935年)は、その後、梅原猛や山折哲雄といった昨今の日本研究者たちにも継承され、欧米の対テロ戦争が始まった後はさらに拡散した。 日本人は寛容なのか?? 日本人のこういう自己理解には、まず統計的な数字を示しておくのがよいかもしれない。2018年に刊行された『現代日本の宗教事情(国内編I)』では、編者の堀江宗正が「世界価値調査」のデータを用いて日本と他国を比較し、その「惨憺たる」結果を示している。指標に選ばれているのは中国、インド、アメリカ、ブ
池内恵(いけうち さとし 東京大学准教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について、日々少しずつ解説します。有用な情報源や、助けになる解説を見つけたらリンクを張って案内したり、これまでに書いてきた論文や著書の「さわり」の部分なども紹介したりしていきます。
仏教のキーワードのひとつに「空」(くう)がある。般若心経の一節、「色即是空 空即是色」にも出てくるあの「空」である。 仏教関係の書物を読み始めたとき、これがさっぱりわからなかった。しかし、ひょんなことからわかってきた。実際には、「空」がわかるためには、「自性」(じしょう)・「縁起」をわかる必要がある。 この3つが、同時にわかったと思えたのは、ナーガールジュナの『中論』をはじめとする、彼の一連の論文を読んでいるときであった。ナーガールジュナ(Nagarjuna:龍樹)は、釈迦の死後約500年ほどしてインドに現れた。(西暦50年から150年頃)大乗仏教に哲学的基盤を与え、後の仏教書で、彼の影響をうけていないものなど、ひとつとしてないといってよいほど、大きな影響を与えた人物である。ただ、彼の言っていることはどれも難解で、特に、独特の論理展開に慣れないと、詭弁を弄(ろう)しているとしか思えない面が
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