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利用者が少なく維持費をカバーできない赤字のローカル線を廃止すべきかどうかという議論がよく行われているが、ほとんど利用されない道路は維持費に見合わないから廃止せよという声はまず聞かない。道路はガソリン税などの税金で維持するものという考え方が国民の間に浸透しているためだ。しかし、『デフレの正体』『里山資本主義』などの著書を持つ地域エコノミストの藻谷浩介氏はこうした考え方に警鐘を鳴らす。平成大合併前の約3200市町村すべてを自分の足で訪問し鉄道と道路の両方に精通する藻谷氏に話を聞いた。 日本の鉄道政策はガラパゴスだ ――ガソリン税による地方鉄道の維持を主張されています。なぜでしょうか。 世界の常識に沿って、日本のやり方は「ガラパゴスだ」と指摘しているのです。世界の常識とは、「交通インフラは税金で整備し、維持する」ということ。旅客鉄道に関しては、路盤を税金で整備し、そこに民間企業が列車を運行させる
サイゼリヤはなぜ定期的に「炎上」するのか 「最初のデートでサイゼリヤに行くなんてありえない」 SNSで定期的に上がってくる話題なので、ご存じの方も多いのではないでしょうか? 気合いが入った初デートであんな安い店に連れていくなんて、とんでもない!というわけですが、この手の書き込みがあるたびに、「なぜサイゼリヤデートが悪いのか!」と文句を言う人があちこちから現れて、その人たちが最初の投稿を「炎上」させるのです。 こうしたやり取りを見るたび、私はとても「ありがたいこと」だと思っていました。 一般に、デートに使うレストランは「ハレ(晴れ)」のレストランじゃないといけない、とされています。特別な日の「ハレ」の舞台となるべきレストランは、高級店がふさわしいというわけです。 それを「ありえない」と感じる人がいるということは、サイゼリヤは「ケ(褻)」のレストランだと思われているということです。「ケ」という
千里ニュータウンの足となった北急 北大阪急行電鉄は、大阪の地下鉄Osaka Metro御堂筋線終点江坂(吹田市)より先、千里ニュータウン方面の足となる南北線を運営する鉄道である。大阪市高速電気軌道(株)を正式社名とするOsaka Metroの前身は大阪市交通局だが、大阪市を脱した吹田・豊中市域の、それも開発途上だった地域に延ばすため阪急と大阪府が主要株主となる別会社となった。「北急」と呼ばれる。 開業は1970年2月24日。アジア初開催、過去最大規模で国の威信をかけたと言われるEXPO’70「日本万国博覧会」が千里丘陵で開かれた年である。当時は我孫子―新大阪間であった御堂筋線を万博会場アクセス路線とするため、新大阪―江坂(吹田市)間を市営地下鉄として、さらにそれと一体で北急の江坂―万国博中央口間を作った。万博は3月から9月の会期中に約6400万人が訪れた。 そして万博閉幕後、北急の路線は江
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中高層の建物が立ち並ぶ住宅団地の中に、少し変わった空間がある。低層で変わった形の建物とその横にあるベランダをくっつけたような格好のデッキだ。 建物は真上から見ると、Y字のような形をしている。この建物は「星形住宅」あるいは「スターハウス」と呼ばれる住棟だ。1950~1960年代に建設された住宅団地に多く見られ、現在では建てかえが進んで貴重な建築となっている。 また、デッキをよく見ると、ベランダをくっつけたような、ではなく実際にベランダを移設していることがわかる。ただ、何の変哲もないベランダで、なぜここにあるのか、不思議に思う人もいるだろう。 この空間があるのは、東京西郊にある住宅団地「ひばりが丘パークヒルズ」の一角だ。このエリアは、以前「ひばりが丘団地」と呼ばれていた。
さまざまな団地で近年、「再生」に向けた取り組みが行われ、なかには一定の成果を出している事例がある。その1つが大阪府・泉北ニュータウン内にある「茶山台団地」(大阪府堺市南区)だ。 約1000戸で構成されるこの団地は以前、入居者の高齢化や減少が進んでいた。しかし今では子育て世代を中心に入居者が増えており、団地再生の成功事例となっている。 そう言える理由は再生に向けた仕掛け、仕組みづくりはもちろん、それ以上に団地運営に関わる「人づくり」、コミュニティー形成に成果をあげていることだ。 団地暮らしはメリットも多い 高度経済成長期に全国各地で開発され、当時は庶民のあこがれの住まいだった「団地」。国土交通省によると約3000カ所あるとされるが、今や住民の高齢化や入居者減少による過疎化といった問題を抱えているものも多い。 このように書くとなんだか寂しげになってしまうが、実は団地の住環境は決して捨てたもので
春は新生活スタートの季節でもある。進学や就職でそれまで暮らした土地を離れて新たな場所に移り住む人もいるだろう。各種の「住んでみたい街」ランキングでは、首都圏の場合、横浜や吉祥寺のように昔から人気の街もあれば、近年人気が高まった例もある。 そのひとつが「立川」だ(東京都立川市。同市の人口は約18万5000人/2024年3月1日現在)。調査によって順位は変わるが、例えば「住みたい街(駅)ランキング2023」(首都圏総合・都県別。2023年9月、長谷工アーベスト調べ)では6位だった。 玄関口である立川駅は乗降客数も多いターミナル駅で、同駅周辺は、東京・多摩地区で有数の繁華街だ。一方で「昔は怖い街」「長年、通過される存在だった」という声も聞く。東京都下では町田や八王子と比較されることも多い立川は、現在、どんな状況なのか。 「街の活性化」「にぎわい」を掲げて地域の再開発に取り組む地元企業、立飛ホール
2023年から北海道日本ハムファイターズの本拠地となった北広島市の「エスコンフィールド北海道」を運営するファイターズスポーツ&エンターテイメントは、売り上げが251億円となり、札幌ドーム時代の前年より91億円の増収となったと発表した。 入場料収入、広告収入に加え、試合のない日の来場者による飲食、物販収入もあり大幅な増収となった。関係者からは「もっと早く移転すればよかった」という声も聞かれる。 「ネーミングライツ」の応募もない札幌ドーム 対照的に札幌ドームは苦境を伝える報道が相次いでいる。ファイターズが去った昨年、ドーム側は新たな需要を喚起するためドーム内を半分に仕切った「新モード」を発表。場内を仕切る高さ30mの暗幕などの設備に約10億円を拠出したと言われるが、この新モードは札幌ドームが主催したパブリックビューイングなどに使われただけで、実質的に利用者がなかった。 ファイターズ人気でついて
イトーヨーカドーが北海道・東北・信越の全17店舗をこの春から順次撤退していくというニュースが報道された。多くの論者が指摘する通り、都心周辺の店舗を残し、都心に特化する戦略だ。 前回(大量閉店「イトーヨーカドー」どこで間違えたのか)はこうした経緯に至る過程を、立地戦略というマクロな視点から概観した。 今回は、よりミクロな視点でヨーカドーについて考えてみよう。都心でヨーカドーは勝ち抜くことができるのか? それを考えるべく、筆者は週末から平日にわたって、東京都23区にあるイトーヨーカドー全15店舗を実際に巡り、現場を徹底的に分析してきた。 この後繰り広げる論考は、あくまで、イチ消費者かつイチ・イトーヨーカドーファンである筆者の個人的な感想に過ぎない。しかし、数日でギュッと見てきたからこその濃さはあるはずだ。 見えてきたヨーカドーの“リアルな姿” というわけで、筆者は数日間で23区の15店舗を巡っ
GMS大手の「イトーヨーカ堂」が、北海道と東北、信越にある「イトーヨーカドー」の全17店舗を、今春から順次閉店することがわかった。 近年、GMSは苦境を強いられており、特に地方立地店舗では郊外型店舗への客足流入などで苦しい状況が続いている。撤退店舗の半分は譲渡先の企業が決定したというが、まだ半分は譲渡先が決まっておらず、もし完全閉店となれば、買い物難民が生まれる恐れもある。 一時は日本を代表するGMSとして名を馳せたヨーカドー。そんなGMSの王者は、どこで道を誤ってしまったのか。今回は、ヨーカドー拡大の歴史を追いながら、その立地戦略に注目してヨーカドー苦境の理由について迫っていこう。 ヨーカドーの前身は「羊華堂洋品店」 ヨーカドーの前身である「羊華堂洋品店」は1920年、東京・浅草に誕生した。創業者は吉川敏雄で、後にヨーカドーを立ち上げる伊藤雅俊の叔父にあたる人物。太平洋戦争ののち、この洋
「日本の警察はめちゃくちゃ友好的です。中国だと勝手にドアを破って入ってきますからね」 2023年春に北京から東京に拠点を移したばかりの郭氏(33歳、仮名)はそう呟く。若きドキュメンタリー映画の監督だ。かつて中国には、当局の審査を受けないインディペンデント映画としてドキュメンタリーを撮った監督が、欧米で賞を獲得しスターダムに登り詰めるというキャリアパスがあった。 だが、2012年に習近平政権がスタートして以降、記録映画業界は徐々に追い詰められて行き、北京、南京、雲南にあったインディペンデント映画祭は2020年までに全て終了となった。 「言論の自由」が移住の理由に 「日本に来たのは、作品の安全のためです。私の作品は未来の人に向けたものなのです」。彼が中国で撮った歴史をテーマとする作品は全て未公開のままで、採算は取れていない。日本に来た最大の理由は、自分が苦労して作った作品をせめて守り通すこと。
2023年の鉄道界は、新幹線の開業のような「大物」はなかったものの、地域の交通や鉄道ネットワークの姿を変える注目すべき新路線の開業や延伸があった。 3月18日には、東急電鉄東横線・目黒線と相模鉄道(相鉄)線を新横浜駅経由で結ぶ「相鉄・東急新横浜線」が開業。同月27日には、福岡市地下鉄七隈線が従来の終点だった天神南駅から博多駅まで延伸した。そして8月26日には、日本初の全線新設LRT(次世代型路面電車)として、栃木県宇都宮市と隣接する芳賀町を結ぶ「芳賀・宇都宮LRT」(ライトライン)が走り始めた。 地域の期待を集めて開業した各線。「その後」の姿はどうなっているのだろうか。 予想を下回る新横浜線 首都圏の鉄道ネットワークに新たな変化をもたらしたのが、相鉄・東急直通線だ。2023年3月に新規開業したのは、東急線の日吉駅から新横浜駅を経て、相鉄線の羽沢横浜国大駅までの約10km。東急線側の日吉―新
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温泉のお湯を6カ月間入れ替えなかったことと、50年間何百人もの子どもたちを触ったり、口腔性交したり、肛門性交を強要すること、どちらが重大な罪だろうか。日本のメディアにとって答えは明白のようだ。 日本のテレビ局の幹部らは、今すぐ自分の名刺にこう刷るべきだろう。「弱きを挫き、強きを助ける」。 テレビ局に対して長きにわたって娯楽を提供してきたジャニー喜多川という男が、世界最悪級の連続児童性加害者の1人であったということに対して、日本のジャーナリズムはことごとく「無力」だった。人的、財務的、物質的資源が豊富にあるにもかかわらず。 バックのない弱いものばかり過剰に報道する 海外のテレビ局が日本のテレビ局についてつねに驚くのは、日本の同業者がヘリコプターを惜しげもなく使うことだ。東京都庁前での50人規模の東京オリンピックに対する反対デモや、各大臣の靖国神社参拝、カルロス・ゴーンの釈放などを撮影するため
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甥の山上徹也が安倍晋三元首相を銃撃した2022年7月8日の事件から、まもなく1年が経とうとしている。 事件後、私はマスコミ関係者に事件の背景を説明してきた。徹也の幼い頃に父親(私の弟)が自死したことや、徹也の母親が旧統一教会に多額の献金をしたことが原因で一家が破産したこと、さらには障害者だった徹也の兄が将来を悲観して自死したことをなどである。そうした事件の背景を説明することが伯父としての社会的責任だと考えたからだ。 徹也の捜査は終了し起訴されたことで、私は、自分の任務を終えたと考えている。ところが事件から1年という節目が近づいているからか、最近、再びマスコミ関係者が私のところにやってくるようになった。その一つひとつに対応するつもりはないため、以下、徹也に関することを記しておくことにした。 海水浴場で見せた笑顔 まずは彼の少年・青年時代に触れておきたい。 彼の父親が自死したのは1984年、徹
歌手になりたい夢を捨てきれない 幼い頃からの夢や恋愛は、成就しそうになかったら早々と諦めて方向転換したほうがいいこともある。20年間を費やして初恋を成就させた物語Netflixシリーズ『First Love 初恋』が話題だが、最終的に結ばれたからハッピーエンドだったものの、仮に叶わなかったならば、一人の女性に執着してすべてを捨てたパイロットの悲劇となってしまう。今日は幼い頃からの夢にしがみついて、貧困に転落し、いまだ抜けだせない42歳女性に会いに行くことになった。 「私は音楽大学出ってことをすごく後悔しています。こんなに貧しくなって、後悔しながらも音楽にしがみついて、まだ音楽を捨てきれないでボーカルとギターのレッスンを続けている。音楽にかかわらなければ、こんな貧しくて苦しい人生じゃなかったかも、普通に生きることができたかも、という後悔です」 神奈川県の新興住宅街、香月江美子さん(仮名、42
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