吉岡助教は筋力余裕度計を持参した。よし、準備万全。取材するぞ。そう意気込んでいた。ところが…。説明が始まったとたん、言葉が全く頭に入ってこない。 「最小下肢関節モーメント」「インバースダイナミクス解析値」「物体の回転速度を計測するジャイロセンサ」「膝と股関節で生み出されるトルク」…。 淡々と専門用語を使って説明する吉岡助教。単語の意味が分からず、言葉というより機関銃の弾のようにも感じた。私大文系卒の私にはほとんど理解不能の世界だった。 たまたま端のほうの席に座ったが、それでよかったと思う。配布資料から目を離せずうつむきっぱなしだったから。 「何がわからないのか」分からない 説明が終わり質疑応答に入った。質問したいのだが、「何がわからないのか」が、わからず声をあげることができない。頭が真っ白になった。 他社の先輩記者や同期の記者も難しそうな表情だが、「要は、(何々)ですか?」などと見当を付け