普通の国であれば、内閣の交代は新たなスタートを切るのに必要な序曲だと見なされるかもしれない。 これはそんな類いのものではない。 筆者はこの災難の後に、この打ちひしがれた国の繊細な感覚の人々から話を聞いているが、これで新しい時代が始まるかもしれないなどと惑わされている人にはまだ一人も出会えていない。 レバノンに無数に存在するキリスト教やイスラム教の宗派を率いる、世襲のエリート層による支配は揺らいでいない。 彼らは1975~90年の内戦を生き延びた軍閥で、国家の収奪を得意としているオリガルヒ(新興財閥)と30年にわたって結託してきた。 今回倒れた内閣も、これらの勢力が黒幕になって昨年10月に選んだメンバーで構成されていた。 前の内閣――利権の共有に基づく連立政権だった――が、政治階層全体に対する一般市民の反乱によって倒された後のことだった。 「時限爆弾」を6年も放置 ベイルートは8月4日、ほぼ