停戦を望むが、奪った領土は返さない――。10月上旬にロシアの独立系調査機関「レバダ・センター」が公表した世論調査の結果は、そのようなゆがんだロシア人の心情を浮き彫りにしていた。 長期化し、先が見えない戦争への嫌悪感が高まりつつも、領土は返したくないとの思いが背景にある。〝強気〟の考えはまた、自国の経済が制裁にも関わらず好調で、都市部を中心に、生活に余裕があることも理由といえる。 ただ、ロシア経済は国家予算の3割ともいわれる巨額の軍事支出に支えられている。そのような支出は再生産性がなく、新たな経済成長につながる投資でもない。現在の財政構造は、制裁を迂回した原油や天然ガスなど一次産品の輸出が支えるが、社会保障費は圧縮され続けているのが実態で、国民生活に影を落としつつある。 巨額の国防支出で保たれるいびつな経済バランスは、いつかは崩れる。そのときにロシア国民の心情にどのような変化が生まれるか、注