2023年6月、パーキンソン病を患っていることを明かしたヒクソン・グレイシー。無敗のままキャリアを終えた“伝説の格闘家”は、負けられない戦いや過酷な運命とどのように向き合ってきたのか。30年来の親交があるフォトグラファーの長尾迪氏が、過去に撮影した写真とともに、ヒクソンの知られざる素顔をつづった。(全2回の2回目/前編へ) 「お前は撮り続けないといけないんだ」 2014年12月22日、私はヒクソンから「ナガオ、話がある」と声をかけられた。それは息子のクロン・グレイシーのMMAデビュー戦の前日だった。彼は真正面から私の目を見ながら、こう話し始めた。 「残念ながら、私はプロの試合からは引退してしまった。明日からはクロンの時代になる。私を撮影したようにクロンを撮影してほしい。だが、彼がトップに立つまでには少なくとも数年はかかる。だからずっとリングサイドで撮影を続けてほしい」