旧東独反体制派の英雄的存在として著名な歌手、ボルフ・ビアマン氏(82)夫妻が4月、ベルリンに暮らす中国人の友人宅を訪れた。「劉霞さんはどう?」。まず気にしたのはノーベル平和賞受賞者の中国民主活動家、故・劉暁波氏の妻の様子だった。 友人は2011年からドイツに亡命中の中国反体制派の作家、廖亦武(りょう・えきぶ)氏(61)。廖氏は通訳を通じ、「霞さんの調子はいいよ。ドイツ語も勉強し、友人もできた」と伝えた。 ビアマン氏は17年、中国で拘束中だった劉氏らを救出するため劉夫妻と親しい廖氏からの手紙や情報を友人のメルケル独首相に手渡し、政府を動かした。劉氏は17年7月に事実上、獄中死し、救えなかったが、霞さんのドイツへの出国は昨年7月に実現した。 「独裁と戦った者は自然と結びつく」。ビアマン氏は廖氏との友情関係をこう語る。東独時代にはギターを武器に体制批判の歌をつくり、国籍を剥奪され、親友は獄中死し