「みなさま。夕食もおすみになり、夜のひとときをおくつろぎのことと思います。ではこれより、正義にみちスリルに溢れる社会の連帯と向上のためのみなさまの番組、そして現実のドラマである〈悪への挑戦〉をお送りいたします。これは法律省のご協力と、スポンサーである……」 あたしはこの番組の熱烈なファン。もっとも、あたしだけじゃない。誰でも、どこでもそうなのだ。開始以来、ゴールデン・アワーのこの番組は驚異的な視聴率をあげ続けている。 老人のひき逃げ事件のリアルな再現映像。 スポーツカーはブレーキの音をきしませ、一瞬止まったが、あたりに誰もいないと知ると、すぐにスピードをあげた。その青年の複雑な表情。発覚への不安から、憎々しい平然さへと徐々に移ってゆく演技が巧みで、あたしの心の底に火をつけた。 怒りがこみ上げ、炎が体中を走り回った。どんなことがあっても許されない行為だわ。早く捕まえてぶち殺すべきよ……。 捜