化学工学,Vol. 73, No. 2, 98 (2009) 調理のコツとして「煮物は冷めるときに味がしみる」と言われていますが,前回の差分法による非定常伝熱解析を応用して,このことをモデル的に検討します。ダイコンの煮物の場合を考えましょう。 ここでは「味がしみる」とは煮汁中のアミノ酸分子が固体のダイコン内部に浸透(物質の拡散)することとします。 先ず「煮る」とはどういう操作かというと,温度を上げてダイコン全体の細胞壁・細胞膜を破壊し,煮汁中のアミノ酸分子の拡散・浸透を容易にする操作です。ダイコンの細胞壁はセルロースとペクチンで固められ, ナマではアミノ酸分子は内部に拡散・浸透できません。加熱することで細胞壁・細胞膜が破壊され,拡散係数が細胞液つまり水と同程度になります。この際,加熱に関係するダイコンの熱伝導度は最初から水と同じですが,一方の拡散係数は「煮る」ことでやっと味がしみることの出
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