2014年も残りわずかとなった。毎年恒例ではあるが、この1年のIT業界を振り返ってみることとしたい。 2013年は「ビッグデータ」がキーワードとなり、Hadoop等の大量データ分散処理技術が成熟し、「データ・サイエンティスト」と呼ばれる新たな人材像が定義されるなど、膨大なデータを蓄積・分析するための土台が出来た年であった。今年はもう一歩進んで、この土台にどうやって有用なデータを投入していくかを模索した年、キーワードでいえば「IoT(Internet of Things )」にまつわる様々な試みが行われた年だったのではないかと思う。 IoT、Internet of Thingsは、直訳すると「モノのインターネット」ということになるが、従来のパソコンやサーバ等の情報通信機器のみならず、世の中に存在するあらゆる「モノ」に通信機能を付けてネットワークにつないでいこうというのが元々の概念である。最近
中国のGDPは2009年に日本を抜いて米国に次ぐ世界第2位となってから、その後も増加し続けている。単純に人口当たりに換算した一人当たりGDPで見れば、中国は未だ7,000ドル台、日本が約38,000ドル台であるから、その差は大きいように感じるが、所得階層別にみていくと見方は全く変わる。 経済産業省資料(*1)によると、中国における2010年時点の高所得層(35,000ドル~)は0.4億人存在し、2030年で3.7億人と推計されている。2030年の総人口が1.2億人を下回ることが予想されている日本の3倍以上に相当するボリュームである。東南アジア諸国の市場拡大も注目されているが、最も人口が多いインドネシアでも2030年の高所得層が0.3億人という推計結果に比較すると、中国市場の動向を無視するわけにはいかないであろう。 所得水準の向上を背景としたライフスタイルの変化に伴い、電力消費量も増加する。
*本稿は、『企業年金』 2014年8月号 (発行:企業年金連合会)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。 英国キャメロン政権は、2013年1月に政策提案書「一層型年金─貯蓄に向けたシンプルな基盤」を発表した。そこには、基礎年金と付加年金の二階建て構造となっている現行の公的年金制度を、定額給付の一階建ての年金(一層型年金)にする改革案が示されている。早ければ、2017年4月から一層型年金が導入される予定である。 そこで本稿では、英国の公的年金制度を概観した上で、改革の背景、一層型年金の内容、移行過程、改革の効果を考察していく。 まず、現行の公的年金制度の体系を概観していこう。英国の公的年金制度は、「基礎年金」と「付加年金」の2階建て構造となっている。基礎年金は、低所得者を除いて、英国に居住する16~64歳の男性、16~59歳の女性が強制加入となっている。給付は定額給付であ
サイバースペースは今やグローバルな共有財だが、世界中で利用可能となったのは、インターネット技術の「標準化」が行われているためだ。同様に、電子メールの送信者のアドレスが正規なものであることを証明する「送信ドメイン認証」や、文書が改ざんされていないことを示す「電子署名」などの規格も標準化を通じた普及が進んでいる。 インターネットは、より幅広く、より高度な利用を行うことができるよう日々進化しており、セキュリティ技術に関しても毎年あるいは3カ月に1回といったペースで向上し、標準化が進みつつある。1階建てだったインターネットという建物に、高信頼のサービスという2階以上の部分が建て増しされ、この30年ほどでどんどん高層構造化しているようなものだ。 そのようなインターネット技術の高度化と標準化を、日本企業は認識できているだろうか。そこに私は問題意識を持っている。私は国際電気通信連合(ITU)の電気通信標
*本稿は、『週刊エコノミスト』 2014年7月15日号(発行:毎日新聞社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。 みずほ情報総研 主席研究員 藤森 克彦 おひとりさまが増えている。若者の一人暮らしだけではない。配偶者と死別した高齢者や、未婚の中高年男性の一人暮らしが急増している。 結婚をして同居家族がいることを「標準」としてきた日本社会において、単身世帯の急増は衝撃であろう。しかし、これは個人の生き方や家族のあり方が多様化していることの象徴でもある。一方、これまで世帯内の助け合いが生活保障の大きな役割を果たしてきたので、単身世帯の抱えるリスクに対して社会としての対応を考えていく必要がある。 単身世帯を考察することは、現在、家族と暮らしている人にとっても無関係ではない。なぜなら、誰もがおひとりさまになる可能性があるからだ。例えば、配偶者との死別や離婚などによって、将来おひ
「米国からはグローバルレベルで活躍するベンチャーが誕生するのに、日本からは出てこないのはなぜか」という議論は、これまで多くの人により繰り返し論じられてきたテーマである。制度面についていえば、わが国のベンチャー振興策は1970年代に始まり、さまざまな政策的拡充を行ってきた結果、米国に引けを取らないほどまで整備されてきた。2014年1月に閣議決定された、いわゆるアベノミクスの成長戦略の具体策(*1)の中でも、ベンチャー投資を促進する制度が新たに創設されており、政府としてはベンチャー振興を産業競争力の強化につなげたいという意思がみえる。 しかし、米国と比して日本から生まれるベンチャーが圧倒的に少ないという事実は、制度拡充だけでは埋められない差違があることを、はっきり示しているといわざるを得ない。 筆者は昨年度、NEDOの委託調査(*2)で米国シリコンバレーを訪れ、ベンチャー企業およびベンチャー企
コンピュータの性能は1年でおよそ2倍(10年間で1,000倍)の速さで発達することが知られており、世界のスーパーコンピュータ(スパコン)の性能ランキングが1年に2度更新されている(以下TOP500ランキング *1)。我が国においても、地球シミュレータが2002年6月からの2年間、京が2011年6月から1年間、世界最速コンピュータとしてランキングされている。 スパコンは、生命科学、創薬、物質科学、防災、ものづくり等幅広い分野において活用され、上記の性能向上により各分野の研究開発をドライブする原動力になっている。筆者が携わるものづくり分野における流体解析(*2)への適用を例にとると、ピーク性能40T(テラ)flops(*3)の地球シミュレータを用いた場合の計算規模はおよそ1億グリッド(*4)であったが、ピーク性能10P(ペタ)flopsの京を活用した解析では300億グリッド規模の解析が実現可能
2013年度を通じて、「3Dプリンタ」(*1)という言葉は世の中に浸透してきた感がある。一時は、新聞・雑誌・ネットにおいて、毎日十数本もの3Dプリンタに関する記事が掲載・配信されたが、現在に至ってはその過熱ぶりも落ち着きつつある。報道の過熱が落ち着く一方で、3Dプリンタの機能について、単に「もの」が造形できるといった視点から、具体的なものづくり現場において「どうやって作るのか」に関心が移っている。 ものづくり現場での3Dプリンタ活用には、試作品や模型製作を低コスト・短工期化するための活用がある。また最近では付加製造技術の研究開発とも相まって、最終製品や部品を直接3Dプリンタで製作するダイレクトマニュファクチャリング(以下、DM)にも注目が集まっている。 3Dプリンタにより試作等のプロセスが効率化されたことにより、従来にない新たな製品が生まれ、注目された事例も見られる。たとえば、「心地よい風
日本が経済発展の途上にあった1971年、東京から富士山が見えた日数は32日だった(*1)。それが現在(2012年)は97日まで増加した。雲のできやすさは大気の濁度だけによるものではないが、数日の差ならまだしも約3倍まで増加してきたことから、様々な取り組みの結果、日本の大気は着実に綺麗になってきたと言えるだろう。 一方、経済発展を続ける中国の大気汚染はとても深刻である。大気汚染が酷い日には、数十メートル先の建物がかすんでしまい、排ガスの臭いが鼻をつく。見通す距離が短いオフィスビル内では感じないが、広めのホテルのロビーや商業施設の中で遠くを見ると建物内でも煙っていることを目の当たりにし、「もはや自分の口元で対策するしかない」とマスクに手が伸びるような状況だ。 大気汚染対策には、排出源の特定、排ガスの品質を取り締まるための法規制の施行、排ガス処理設備の設置、そして排出状況を継続的にモニタリングす
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