ブックマーク / www.nli-research.co.jp (136)

  • グローバル人材育成の機運高まりに思うこと

    人の命には限りがある。そんな個(人)が集まり、独自の集合(国)を形成し、更にその集合体が全体(世界)を形作る。全体の威光(グローバリズム)は、各集合へ、また各個へと伝播する。個はその全体(世界)を理解し、されど染まらず、帰属する集合を意識するからこそ、全体は単一の集合にならず、永続性とともに多様性も担保される。 人材の育成(教育)は国家100年の計である。ゆえに、日国として真に欲する人材像は、100年のビジョンを持ち、その上で、描ききらなくてはならない。 アベノミクスの成長戦略の具体的な提案の一つとして、グローバル人材育成を掲げた。では、グローバル人材とはどのような能力を有し、国家100年の計に値する施策であるのか今一度考察してみたい。 2011年6月の「グローバル人材育成推進会議 中間まとめ」1において、育成・活用していくべきグローバル人材の概念が整理されている。グローバル人材における

    グローバル人材育成の機運高まりに思うこと
  • 「歩きスマホ」のリスク社会 -あなたも加害者や被害者になるかも・・・

    5月20日の欄で『携帯を持たない私は、やがて絶滅危惧種になるかもしれない』と書いた*。それほど携帯電話やスマートフォン(スマホ)は日社会に拡がっている。特に、スマホの普及は著しく、最近では歩きながらスマホを使用している「歩きスマホ」も日常的によく見かける。 スマホの場合、携帯電話に比べ画面に注意が集中して周囲の状況が分かりにくい。その結果、自ら躓いたり転倒したり、さらには駅ホームからの転落や自動車との接触など、非常に危険な状況が生じている。その上、他の人にぶつかったり、お年寄りや子どもなど移動弱者に危害を加えたりする可能性も高く、スマホは「歩く凶器」とまで言われることがある。 先日、通勤途上のJR駅の上り階段で、目の前の「歩きスマホ」の女性が急に立ち止まった。私はもう少しで激しくぶつかるところだった。もし、あれが下り階段だったら、私は彼女を転倒させ、転倒した彼女が近くの人たちを巻き込む

    「歩きスマホ」のリスク社会 -あなたも加害者や被害者になるかも・・・
  • 消え行くホワイトカラーの仕事 ~対応に必要な教育の改革~

    1.人間対機械の競争 コンピューターの進歩によって多くの人が仕事を奪われてしまうのではないか、という話が話題となっている。日では、コンピューターの将棋ソフトがトッププロを破って話題となった。 米国では、「ホワイトハウスで爆発。オバマ大統領負傷」というデマが米通信社のTwitterに掲載され株価が急落したが、情報が偽物だと分かるとすぐに急回復したという事件もあった。その間わずか数分のことで、コンピューターがインターネット上の情報を判断して売買を行っているためだとういう。人間にしかできないと思われていた情報を判断するという高度な仕事も、コンピューターにとって代わられようとしている。 少し前までは、「コンピューターは単純計算や大量のデータ処理を行うようになったが、知的労働の分野では複雑な判断を要するような仕事は人間でなくてはできないだろう」と考える人が多かった。1997年にチェスの世界チャンピ

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  • 少子化政策めぐる議論への疑問 -“待機児童ゼロ”の「子育て」・「子育ち」支援

    安倍政権は「成長戦略」として女性の活躍できる社会を目指し、保育所待機児童の解消や3年育児休業の実現を打ち出している。先日も、首相自ら東京都内の事業所内保育施設や横浜市内の民間企業が運営する認可保育所を視察している。ようやく少子化対策が国の根幹にかかわる施策であることが広く認識されるようになったものの、私はその政策実現をめぐる議論にやや疑問を感じている。 それは少子化政策の対象主体についてである。少子化政策には、子どもを育てる主体(おとな)と、成長・発達する主体(子ども)に対する施策がある。ここでは前者を「子育て」支援、後者を「子育ち」支援と呼ぼう。少子化政策としては、両者が相乗的に機能することが重要だが、最近の少子化をめぐる議論は、「子育て」支援が中心で、「子育ち」支援の視点が希薄であるように思えてならないのだ。 先般も「3年育児休業」に関して多くの政治家や有識者から賛否両論の意見が出てい

    少子化政策めぐる議論への疑問 -“待機児童ゼロ”の「子育て」・「子育ち」支援
  • 教育改革「アベデュケーション」~「大学入試へのTOEFL導入」で揺れる日本の英語教育

    安倍政権は3の矢((1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略)を柱とした経済政策「アベノミクス」を打ち出した。そのうちの一つである成長戦略の具体的な提案として、自民党教育再生実行部は、4月8日、国の国際競争力を高めるため、グローバル人材育成を目的とした「大学入試へのTOEFL導入」を提言した。 果たして、大学入試へTOEFLを導入することは、日人全体の英語力を底上げし、また将来の日を担うグローバル人材の育成につながるのであろうか。 TOEFL(Test of English as a Foreign Language)とは、米国はじめ英語圏の大学や大学院に入学を希望する非英語話者の英語力を測る120点満点の試験である。一般に日の大学入試は「読む」の試験であるが、TOEFLでは、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの技能が総合的に測定され、中

    教育改革「アベデュケーション」~「大学入試へのTOEFL導入」で揺れる日本の英語教育
  • 年金支給開始年齢の引上げ -財政状況を国民に的確に開示し世論の喚起を

    2012年秋の三党合意に基づいて設けられた社会保障制度改革国民会議が、ようやく年金制度改革の議論に着手した。民主党政権の末期においては、最低保障年金の導入等を柱とする年金改革が議論されたものの、結局、自由民主党及び公明党とは十分な合意に至らず、社会保障制度改革国民会議に下駄を預ける形となったものである。ところが、その後の政権交代を経てからの民主党の党勢減退や、アベノミクスによってデフレ脱却を中心とする経済問題へ関心が向かったために、国民からの注目は社会保障問題から外れつつあるようにも見える。一方、引続き、生活保護の不正受給者逮捕が報道されているなど現状の社会保障制度に様々な問題があることは、静かに国民の深層意識の中に刷り込まれている。社会保障制度改革国民会議では、年金のみならず社会保障制度全般について議論することとなっていたため、三党合意で大まかな不公正について妥結していた年金制度改革は、

    年金支給開始年齢の引上げ -財政状況を国民に的確に開示し世論の喚起を
  • 高齢社会検定試験の薦め ~現代社会に不可欠な基礎知識の習得を~

    「高齢社会検定試験」と聞いて、何のことだと思われた人がほとんどではないだろうか。これは、一般社団法人 高齢社会検定協会が今年の9月14日(土)に第1回の試験を東京大学駒場キャンパスで実施する全く新しい検定試験である。この検定試験は、個人の長寿化、社会の高齢化に伴う課題を解決し、より豊かな未来を築くために必要な知識を提供することを企図して創設されたもので、その中身は総論、個人編、社会編の3部により構成されている。受験にあたっては、(1)「総論+個人編」、(2)「総論+社会編」、(3)「総論+個人編+社会編」の3コースが設定され、「総論」(試験時間30分)、「個人編」(50分)、「社会編」(50分)の試験を個々に受験する。総論の合格を前提に、総論に加えて個人編を合格した場合に「高齢社会エキスパート(個人)」、社会編を合格した場合に「高齢社会エキスパート(社会)」、個人編と社会編も両方合格した場

    高齢社会検定試験の薦め ~現代社会に不可欠な基礎知識の習得を~
  • 「女性手帳」で子どもは増えるか -「女性手帳」批判から考える説得的コミュニケーションのあり方

    内閣府の少子化危機突破タスクフォースの中で取り上げられた、いわゆる「女性手帳」の配布について、各処で批判の声があがっている。主要な批判の内容としては、(1)結婚や出産は個人、あるいは男女の自由意志によるものであり、政府が方向づけする類の話ではないとするもの、(2)男女双方が考えるべきものであり、女性にのみ「女性手帳」を配布するのは晩婚化や晩産化の責任を女性に転嫁している、とするものに大別できよう。 来、結婚や出産は個人の自由意志に委ねられるべきであり、晩婚化や晩産化は男女双方が責を担うべきものである。したがってこれらの批判は正鵠を射たもののように思われる。このような批判が事前に十分予測できたと思われるなかで、少子化危機突破タスクフォースにおいて敢えて「女性手帳」の配布が取り上げられた背景には、様々な政策を積み重ねてきたにも関わらず、出生率の改善が緩やかにしか進んでいないことに対する政府の

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  • 働く女性の消費実態 ~独身・妻・母の生活状況や消費志向の違いは?

    ■見出し 1――改めて注目される女性マーケット~多様化する女性のライフスタイルと消費志向 2――20~30代の働く女性の生活状況 1│就業形態の状況~や母では正規雇用者が減少、パートや自営業が増加 2│収入の状況~や母では夫の扶養控除枠を意識した年収100万円未満層が多い 3│同居家族の状況~独身の大半は親と同居 4│居住形態の状況~家族形成に伴いマイホームを購入 5│生命保険加入状況~独身よりより母で生命保険加入率が上昇 3――実際のデータから読み取れること 1│日常生活でお金をかけているもの~独身とは「趣味」「ファッション」、母は「事」「子どもの教育」 2│今後お金をかけていきたいもの~独身とは「貯蓄」「趣味」、母は「子どもの教育」「貯蓄」 4――20~30代の働く女性の商品・サービスの購買行動 1│商品・サービスの購買行動要因~「安全・環境配慮志向」「情報収集・比較検

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  • 再び不動産ブーム到来か-投資マネーを新たな成長の糧に

    株高、円安、大胆な金融緩和政策などを背景に投資マインドは好転し、実体経済の回復を先取りした投資マネーが不動産市場に雪崩れ込んでいる。金融商品であるJ-REIT不動産投信)の時価総額は、この2013年3月に2007年5月のピークを上回って過去最高記録を更新し、期末には東証REIT指数の年間上昇率が過去最高の66%となった。「土地バブル」ともいわれた前々回の不動産ブーム(1986~1991年)では、国内企業や個人のおカネが山林原野も含めた全国の「土地」に流れ込んだ。その後、1990年3月に大蔵省が金融機関に対して行った不動産向け融資の総量規制を引き金に地価は一転して下落、2006年まで上昇することはなかった。この結果、土地は必ず値上がりする資産ではなくなり、戦後の高度経済成長が生んだ「土地神話」は崩壊した。 「ファンドバブル」ともいわれた前回の不動産ブーム(2006~2008年)では、戦後最

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  • アップルのものづくり経営に学ぶ-創造性(製品企画開発力)と経済性(収益力)の両立の徹底追求

    ■見出し 1――はじめに 2――サプライチェーン改革に関わる考察 3――自社小売店舗網の構築に関わる考察 4――部品調達・生産委託と設備投資の考え方 5――世界を良くしたいという高い志が経営の原動力 6――日企業へのインプリケーション ■introduction 米アップルは、2001年発売の携帯音楽プレーヤー「iPod」を皮切りに、スマートフォン「iPhone」、タブレット「iPad」など、人々のライフスタイルを豊かにする画期的な製品・サービスを相次いで開発・発売し、それらの大ヒットにより世界を代表するハイテク企業に躍進した。 しかし、アップルも順風満帆でここまで来たわけではない。90年代後半にパソコンのOSを巡る競争で米マイクロソフトの「Windows」に敗れ、パソコンの市場シェアを低下させ経営危機に陥った。未曾有の経営危機を受けて、経営方針を巡る対立などにより85年に同社を去った創

    アップルのものづくり経営に学ぶ-創造性(製品企画開発力)と経済性(収益力)の両立の徹底追求
  • 「3年育児休業」の問題点 -シングルファーザーのつぶやき

    安倍政権が、3目の矢として掲げる「成長戦略」の中核として、女性の活用を打ち出した。具体策には、保育所待機児童の解消や育児休業(育休)の3年延長がある。「3年育休」については賛否両論*があるが、私は基的に反対の立場だ。その理由は次のとおりである。 第一に働く人(主に母親)のキャリアにとってマイナスになると考えるからだ。企業におけるビジネスツールやスキルの変化は著しい。休業期間中のスキルを維持するための支援プログラム等もあるが、3年の育休後の復職は厳しいと言わざるを得ない。結果として、女性の育児役割の固定化や二人目以降の出産の躊躇に繋がり、「3年育休」は少子化対策や女性の力を活かすことにはならない。 第二に、業務環境が大きく変化する中、企業にとって3年間の育休取得者を雇用し続けることは、そのコスト負担と人員配置の不確実性から事業リスクがあまりに大きい。そのリスクを考えると、企業は女性人材の

    「3年育児休業」の問題点 -シングルファーザーのつぶやき
  • 日本における寄付年金の導入を考えよう! ― アメリカの事例を参考に ―

    昨今日では「新しい公共」という言葉をよく耳にする。「新しい公共」とは、これまで行政により担われてきた「公共」を、これからは市民・事業者・行政の協働によって実現しようという考え方である。実際に、従来政府の役割と考えられてきた業務を、政府に代行して推進していくNPOなどの社会団体が次々と活動を始めている。このようなNPOなどの活動は、大体が市民や企業などの寄付金によって財源がまかなわれている。従って、今後新しい公共の推進や民間の福祉財源の確保のためには、寄付文化の活性化が重要である。そこで、アメリカで実施されている寄付年金制度について紹介したい。 元々アメリカは寄付文化が成熟した国としてよく知られている。2011年のGiving USA Report1によると、2010年におけるアメリカの寄付金総額は2,909億ドル(対GDP比2.0%)で、そのうち個人寄付金は2,117.7億ドルと全寄付金

    日本における寄付年金の導入を考えよう! ― アメリカの事例を参考に ―
  • 迫る地方財政・税制改革 ~ 住民のコスト意識を喚起できるか~

    今年の7月から地方公務員の給与が削減されることを前提に、平成25年度地方財政計画において地方公務員給与費は8,500億円の削減が見込まれている。公務員給与はよく民間企業の平均給与と比べられ、民間側の人は「公務員が給与を貰いすぎ」と主張する一方、公務員側の人は「大企業の平均給与と比べれば大きく変わらない」、「諸外国に比べて少ない人数で質の高い公共サービスを提供しているので妥当だ」と主張するなど議論は尽きない。実際、公務員給与は民間給与と比べてどの程度が適正なのか、求められる仕事内容も異なるので簡単に判別できるものではないように思う。しかし、この手の話を耳にする度に以下の絵が頭から離れない。 これは求められる仕事が同程度であれば給与も同じでなければならないという考えからでてきたものだ。この図表を見ると、技能労務職員の給与はどの職種においても民間類似職種の給与を大きく上回るということが分かる。

    迫る地方財政・税制改革 ~ 住民のコスト意識を喚起できるか~
  • TPPに対する誤解 -欠かせない内需の拡大

    1.加速するTPP交渉の動き 安倍総理は、去る3月15日に記者会見を開き、TPP(環太平洋経済連携協定)に向けた交渉への参加を正式に表明した。これによって、これまで足踏みを続けていた交渉の動きは一気に加速している。現在交渉に参加している米国などの国々は、4月20日にインドネシアで開催された閣僚会合で日の交渉参加を正式に承認し、これを受けて米オバマ政権は、日との交渉を開始すると議会側に正式に通知した。 日国内では、TPPへの参加によって輸入が増えて大きな影響を受けると予想される農業分野では、これまで絶対反対と言うだけだったが、TPPへの参加を前提として、どのような対策をとるべきかという議論も始まった。 2.注目すべき政府試算の中身 安倍総理の交渉参加表明と同時に政府が発表したTPPの経済効果に関する試算では、参加によって日経済を3.2兆円、GDP比で0.66%押し上げる効果があるとさ

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  • J-REIT市場 3本の柱~「資産運用」「不動産投資市場」「都市ストック」のアンカー役としての責任~

    経済再生を目指して「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3の矢からなるアベノミクスは、それまで冷え切っていた金融市場のマインドを鮮やかに一新し、円安・株高への大転換を導いた。第1の矢である「大胆な金融緩和」は、2年間で2倍のお金を市場に流す「異次元緩和」に昇格し、成否の鍵を握る3目の「成長戦略」は、6月にもその全貌が明らかになる。そして、このアベノミクスの恩恵に最もあずかった金融商品は、J-REIT不動産投資信託)市場であろう。市場全体の値動きを示す東証REIT指数は年初より約50%上昇し、市場時価総額は過去最高の7.2兆円に拡大した。良好な金融環境を追い風にJ-REITによる物件取得額はこの1月からだけで既に1兆円に迫り、旧政権下で策定された「2020年までにJ-REIT市場の資産規模を倍増する目標」を前倒しで達成できる勢いである。 ただ、実体経済や

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  • 「社畜」と「ノマド」の間-適度な「社間距離」の「ノマド風」働き方

    私は20数年前、初めて「社畜」という言葉を聞いた。「社畜」とは、『勤めている会社(営利企業)に飼い慣らされてしまい自分の意思と良心を放棄し奴隷(家畜)と化したサラリーマンの状態を揶揄したもの』(フリー百科事典:ウィキペディア)とある。随分、人を馬鹿にした言葉だと思うが、さすがに近年では、「社畜」と呼ばれるサラリーマンは少ないだろう。 日の高度経済成長期において、私生活を犠牲にしてまで働き続けた「社畜」は、もちろんそれだけのリターンを期待することができた。当時の会社は企業福祉の中で従業員の家庭生活を丸抱えにし、従業員は「社畜」として生きることと引き換えに多くの生活保障を得てきたのだ。それは「御恩と奉公」による戦国時代の主従関係と同じように、互恵関係だったのである。 しかし、今日では企業の終身雇用制が崩れ、従業員に対する企業のシェルター機能は弱まった。そして、従業員と会社の関係は希薄になり、

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  • マンションの防災力を強化する本当のメリット-自治体によるマンション認定制度に期待

    防災力を強化したマンションを認定する制度を導入する自治体が増え始めている。2009年度に大阪市が創設した「防災力強化マンション認定制度」を初めとして、2012年度には大阪府が市と同様の認定制度を導入し、2013年度からは、仙台市が「杜の都防災力向上マンション認定制度」を、東京都墨田区が「すみだ良質な集合住宅認定制度」をスタートさせた。 いずれも、防災性能に関する一定の基準に適合するマンションを自治体が認定する制度となっている。例えば大阪市の認定基準では、建物構造の安全性、家具転倒防止対策など建物内部の安全性、避難路や空地の確保など避難時の安全性、水・糧備蓄などの災害後3日間の生活維持を図る備え、エレベーターや水道が使用できなくなった場合に高層階住民が避難生活を送るための対策、さらには、日常の自主防災活動の実施も示されており、他の自治体もほぼ同様の基準を設けている。マンションの防災対策と聞

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  • 住みたくないスマートハウス、住みたいスマートハウス

    室内に設置されたロボット掃除機は、入居者が問いかければ天気や鉄道の運行状況、沿線のニュースなどを音声で提供してくれるうえ、生活習慣などをデータとして蓄積・分析し、入居者に適した情報提供もできるようになる。そんな実験が都内の大型賃貸住宅プロジェクトで始まった。また、住民が装着するリストバンドや体重計で計測したデータを蓄積し、スマートフォンで健康状態を確認できるサービスの実験もある。利用者の声で設定温度が変るエアコンや野菜から出るCO2をセンサーが読み取って最適な温度になる冷蔵庫、外から自宅の家電や風呂などに指示を出せるシステムも開発されている。真面目に開発している方々には申し訳ないが、そういった家にはあまり住みたくないし、センサーだらけの家電より、斬新なデザインやメカニズムの海外勢や独立系の家電の方がよほど魅力的だと思う。無数のセンサーに生活をモニタリング(監視)されたうえ、節電上手で健康的

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  • 「単身赴任」の今日的課題-“亭主元気で留守がいい”社会は健全か?

    4月は異動の季節だ。転勤の辞令をもらい、新天地で新たな仕事に取り組んでいる人もいるだろう。少し古いデータだが、厚生労働省の平成16年「就業条件総合調査」1) によると、転居を必要とする人事異動(以下「転勤」)がある企業は29.2%、企業規模別にみると1,000人以上では8割を超えており、多くの大企業は組織の活性化、人材の育成や適材適所、事業の拡大・縮小などに対応するため従業員の異動を実施している。また、有配偶単身赴任者がいる企業は19.6%で、その人数は平成6年の25万4千人から平成16年の31万7千人に増えている。 「転勤」は家族帯同を原則とする企業が多いものの、同調査結果の通り「単身赴任」は増加傾向にある。その理由としては、「子どもの進学」や「老親の介護」など少子高齢化という社会環境変化による様々な家庭の事情が考えられる。近年では、中高一貫教育の私学中学を受験する子どもも多く、子どもが

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