銃乱射事件や息子の大学費用を考えるうちに、アメリカに住む気持ちがどんどん萎えていった景子。そこに、パンデミックが起こった。アメリカで一向に収束する気配の見えないコロナ、マスクに反対する人々、BLMに便乗して起こる暴動などのニュースに景子はさらに疲弊していった。 そんな景子の心を決定的に折ったのは、8月半ばに多発したカリフォルニア州の山火事だった。カリフォルニアだけで600件の山火事が発生し、東京都の面積の6倍近くが焼失した。サンフランシスコ周辺には8月から煙が流れ込んでいたが、9月9日には空が火星のようなオレンジ色に染まった。景子によると9月上旬から太陽が朝から真っ赤で、ついに9日にはオレンジ色の空から灰が一日中降り注ぎ、マスクをしていても咳が止まらなかったという。 「山火事は通常、毎年10月に起こるのに、今年はいつもより1カ月早く、史上最悪の規模で起こりました。これは地球の温暖化がますま