エースが跳ぶ。力強く拳を振り上げる。J1最多得点記録保持者・中山雅史がかつて、ゴールを決める度に見せたパフォーマンスだ。少年時代から憧れ続けた偉大なストライカーの記録「157得点」に並ぶゴールを決めた時、佐藤寿人は迷いなく“ゴン・パフォーマンス”を見せ、ベンチへと走った。そこに待つのは紫の仲間たち。胴上げだ。試合途中では異例中の異例だが、佐藤隆治主審も笑顔で黙認する。それほど偉大な記録に、広島のエースはたどりついたのだ。 ただ、寿人は決して、成功者の道を約束されていたわけではない。もちろん、年代別代表の常連だった彼の将来性は、高く評価されていた。だが、プロ2年目の2001年、ワールドユースから戻ってきた寿人を待っていたのは、ジェフ市原(当時)でのベンチ外という試練。2001年のセカンドステージはわずか3試合73分間の出場のみ。メンバー入りすら4試合のみという状況では、寿人も自らのサッカー人