「債務超過に陥る具体的な時期は分からないが、今のスキームで賠償金の仮払いを始めると大変厳しい状況になる」。東京電力は5月20日、1兆2473億円の最終赤字を計上する2011年3月期連結決算を発表。記者会見で清水正孝社長は危機感を隠さなかった。 数兆円とも言われる損害賠償や原子力発電所の廃炉費、原発停止で増える火力発電の燃料費。債務超過が現実問題として迫る東電は、一刻も早く政府の公的支援スキームを引き出したいところ。その代償として求められる資産売却には積極的にならざるを得ない。 「6000億円以上を見込む」(清水社長)という資産売却の柱が、東電が保有する時価1743億円のKDDI株である。「経済産業省の強い斡旋で、住友商事がKDDI株取得に意欲を示している」(関係者)という。 東電は1985年の通信自由化直後に東京通信ネットワーク(TTNet)を設立し、通信事業に参入した。送電網の監視用に張