店は「雪の下」といった。大通りと土産物屋が立ち並ぶ通りに挟まれた場所に立っていた。 ふたつの通りは観光客が一年中あふれている。並んでいる食べ物屋も、古い店はそれなりの価格設定になっている。だが、新しい店や通りから奥に引っ込んだ店は、それなりにリーズナブルな価格になっている。店によっては、リーズナブルな店の倍の金額を取る店もある。 舞が初めてこの店に来たころ、彼女はこのあたりで働きたくて、働き口を探していた。母親のいる老人ホームがこのあたりにあるからだ。舞の母親は、クセのある母親らしく、最後死ぬときはこのあたりが良いと言い張って、勝手に老人ホームに入所した。もちろん、費用は舞が持った。急に言い出すので、夫が死ぬときに残した生命保険は使い果たした。日本の慣習的に、老人ホームに入ったからといって、全く放っておくわけにはいかない。我ながらため息が増えたと思うのだが、断ち切れぬものは断ち切れぬものと
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