大粒の汗が、子ども用スマホの画面にしたたり落ちた。 茜はハンドタオルを取り出して額をぬぐい、そのまま画面の汗も拭きとろうとした。しかしタオルはもうすっかり湿っていたため、うまく拭きとることができなかった。やむを得ず、表示がはっきり見えるまで、その液晶部分を何度もシャツの袖にこすりつけた。 (ここらへん……なんだけど……) あらためて画面を覗きこむ。さきほどからずっと、地図用のアプリは立ち上がったままだ。目的地のフラグと、自分の現在位置のフラグとは、たいして離れていないように見える。確かにそう見える、のだが……。 茜は辺りを見渡した。正面にはどこまでも続く、長い長いアスファルトの道があった。左右にはうすら高い塀や電柱がそびえ立ち、その奥には大小さまざまな家々が並んでいる。通りには人気もなく、それどころか犬猫の姿すら見えない。よそよそしくも寂しげな、郊外住宅の一景が広がっていた。 さらに――頭