バグダードのフランケンシュタイン 作者:アフマド・サアダーウィー,柳谷 あゆみ発売日: 2020/10/26メディア: 単行本この『バグダードのフランケンシュタイン』は、アラビア語からの翻訳、しかもシェリーの『フランケンシュタイン』の流れを汲む物語である。SFと帯には書いてあるものの、実態としてはファンタジィ、幻想小説としての色合いが濃い長篇小説だ。 原書は2013年刊行だが、物語の舞台になっているのは2005年頃のバクダード。この当時のバクダードは荒れに荒れている。イラク戦争を経てサダム・フセイン政権は打倒され暫定政権が立てられたものの、現政府勢力と旧政府勢力の抗争は激化。米軍、スンナ派、シーア派と多数の勢力が入り乱れてカオスになっていて、そこら中で爆破テロが起こり、身内が次々と爆発・四散していく、過酷な状況だったようだ。 本書は、そんな悪夢的なバグダードで日々を暮らさざるを得ない無数の