一穂ミチ(いちほ・みち) 大阪在住。2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。劇場版アニメ化もされた『イエスかノーか半分か』など、BL作品を中心に執筆。21年、一般文芸作品としては自身初となる単行本『スモールワールズ』で、吉川英治文学新人賞を受賞。同作と22年『光のとこにいてね』がともに本屋大賞第3位、直木賞候補作に選ばれる。 あの不安を書かざるを得なかった ――今作はコロナ禍を背景とした短篇集。給付金詐欺やフードデリバリーサービスなどパンデミック以降のトピックスが織り込まれています。なぜこのテーマを選ばれたのでしょうか。 最初からそう狙っていたわけではなく、「小説宝石」から依頼されたのが2021年でパンデミック真っ只中だったんですよね。当時は私自身、この先どうなるんだろうという不安がすごく強くて、この状況を書かざるを得なかったんです。「小説宝石」は毎号お題があるのですが、最初のお題は