最新刊 『Voice』 (PHP研究所) 4月号に寄稿させていただきました。若干 Voice 的アナロジーも含めていますが、その拙記事を本ブログでも (注; 実掲載とは若干異なります) アップさせていただきます。 巷に頻繁に登場する、 '近藤理論' を中心に据えた議論について、それに注目すること自体が結局のところ出版ビジネスの術中にはまっているのではないでしょうか。タイトルは辛辣ですが、その理由については本内容をみていただけたらと存じます。 ファウストは、悪魔メフィストフェレスに向かって言います。「悪魔は利己主義で、悪魔のただほど高いものはないはずだ」と (ゲーテ『ファウスト』より)。 「がん」は人生を一変させる暗い病気です。ひとたび、「がん」が厳粛な現実として訪れた際には、ひとりひとりが何よりも重要な意思決定をしなくてはいけません。しかし、インターネットやSNSの普及などによって、情報の
ビジネスの世界では、何かを主張したり、何らかの意思決定を下す場合、それらの根拠は数字で示すように、と教えられるのではないでしょうか。一方で、都合よく巧みに数字を操ることで、事実 (ファクト) が歪められることも多々あります。数字自体は嘘をつきませんが、嘘つきが数字を利用するとどうなるでしょうか。 結論が先にあって、それに都合のいい数字を調達する、ということがクセになってしまうと、いつしか自分に都合のいい数字やデータしかみえなくなるものです。多くの人は統計リテラシーが身についていないことが多いため、そのように数字を利用した論理展開に寄り切られてしまうことも少なくありません。 少し前になりますが、写真週刊誌『FLASH』(2014年11月4日号) にセンセーショナルな記事が掲載されました。以下のような、子宮頸がん検診を否定するメッセージです。 「若い人で見つかっているのは、ほとんどがたいしたこ
2人に1人はがんになる時代。理非曲直を明らかにすべく、外科医と腫瘍内科医(抗がん剤治療専門医)を兼ねる大場大(まさる)氏(42)は7月、「がん放置療法」の近藤誠医師(66)への批判を展開した。近藤氏は反論を試みたが、逆に浮かび上がったのは、「7つの嘘」だったのである。 *** 「週刊新潮」の三文記事と某医師については、“10倍返し”で反論予定。お楽しみに!!――。近藤氏ご当人が監修する漫画の扉には、こんな惹句がちりばめられています。某医師とは他ならぬ私のことで、「近藤理論批判記事」への“反撃”のようなものなのでしょう。もちろん、私は娯楽ではなく、何が正しいのかという基準を提案すべく議論をしています。しかし彼にとっては、読者の期待を煽るネタでしかないのです。 *** そう喝破するのは、「東京オンコロジークリニック」院長の大場大医師である。7月、「『がんは放置しろ』という近藤誠理論は確実に間違
故 川島なお美さんの件で問題にされている近藤誠氏について、川島さんの闘病手記『カーテンコール』(新潮社) の序章で、以下のように叙述されています。 それからもうひとつ。 様々な著書で有名なM(近藤)先生の存在です。 先生の本でためになったこともたくさんあります。即手術しなかったのも、抗がん剤や放射線治療に見向きもしなかったのも先生の影響かもしれません。 でも、がんは放置さえすれば本当にいいのでしょうか? 何もしないことが最良の選択なのでしょうか? 検診にも行かない。がんを発見することも無駄。知らぬが花だ・・・・。 私はそうは思いません。 がんかもしれないと診断されることで、人生真っ暗になってしまったとしても、 それは一瞬のこと。 目からウロコの「気づき」をたくさんもらえて、かえって健康的でいきいきした人生に変わることだってある。それは、自分の病への向き合い方次第なんです。 ただただ放置し、
川島なお美が遺著で近藤誠医師のセカンドオピニオンを告発していた!「あれは何だったの」「がんを放置しないで」 〈抗がん剤や放射線治療に見向きもしなかったのも先生の影響かもしれません。でも、がんは放置さえすれば本当にいいのでしょうか?〉 今年2015年9月に54歳と若くして胆管がんで亡くなった川島なお美が、ベストセラー『患者よ、がんと闘うな』などの著書をはじめ“がん放置療法”で知られる近藤誠医師を批判していたことがわかった。 たしかに、川島は近藤医師からセカンドオピニオンを受けており、そのことが論議を呼んでいた。もともとは近藤医師自身が「文藝春秋」11月号で川島が2年前に近藤医師の外来を訪れ、がん治療のセカンドオピニオンを受けていた事実を明らかにしたのだが、その近藤医師のセカンドオピニオンの内容に対して医学界から「近藤氏の診断のせいで、手術を遅らせ、治るチャンスを逸してしまった」という批判の声
川島なお美さんの闘病手記「カーテンコール」(新潮社) が本日発売され、目を通してみました。芸能人ならではのリテラシー問題も垣間みえましたが、生活 (=life) の質というQOLではなく、人生 (=life) の質、生き方 (=life) の質というQOLを何よりも大切にされていたことが伺えました。あとは、本書にたびたび登場してくる患者さんの藁にもすがる思いにつけ込んだ、「がんビジネス」が盛んなことにも驚きました。 そして、かねてから問題視してきた近藤誠氏によるセカンドオピニオンのまずい実態が明らかにされただけではなく、彼女が受けた腹腔鏡手術についての新たな疑問点もみえてきたので述べてみたいと思います。 本書の中では、ドクターとの「お見合い」と記されているように、川島さんは自身が心底信頼の置ける医師を求めて、多くのセカンドオピニオンを受けていたようです。その中でも、近藤氏のもとへは2番目に
誤った発信、許されない がんの治療に関する情報があふれている。中には、最新の医学とはかけ離れた治療法を勧めるものも多い。私は乳がんを患い、当事者の視点も含めてくらしナビ面で昨夏から「がんステージ4を生きる」、「がん社会はどこへ」の連載取材に携わってきた。現代医学の恩恵を受けている者として、日本人の2人に1人ががんにかかるとされる今、患者が安心して治療を受けられる社会を実現させたい。そのためにも、誤った情報発信は断じて許されない。 放置のすすめ、上がる反論の声 近年、注目を集めるのが元慶応大医学部講師・近藤誠氏の著書だ。近藤氏は「がんは放置すべし」などと、現在のがん医療の根幹を否定する。2012年、文化的業績に対して贈られる「菊池寛賞」を受賞、同年出版の「医者に殺されない47の心得」は100万部を突破した。 しかし現場の医師からは「本を読んでがんを放置した結果、病を悪化させる患者がいる」「救
このブログで、川島なお美さんのことに触れたことが反響を呼び、『女性セブン』(小学館) から取材を受けた記事が現在掲載中です。さらには、総合オピニオンサイト「iRONNA」で『誰が川島なお美の命を奪ったのか』というテーマとして、詳細な記事を書かせていただきましたので、よかったらそちらもご覧ください。 http://ironna.jp/theme/410 他にも様々な分野でご活躍中の医師たちが、それぞれの切り口で寄稿されているのですが、率直に申し上げると、どれもこれも各論を極力省き、耳障りのよい「なんとなく論」に落とし込んでいるということです。そんなことでは、水掛け論に終始してしまいます。各論にこそ、プロフェッショナリズムが問われるのです。 彼女の患った「肝内胆管がん」患者のことなど、現場でまともに直接診たこともないはずの専門外の医師たちが、「胆管がん」という大きな枠 (フレーム) で教科書記
外来予約制へのご協力について がん研有明病院の外来は、予約制を原則としています。予約なしで当日いらした方も、お断りはしないこととなっていますが、乳腺センターでは、ほとんどの診察時間が予約の方で埋まっている状態です。このため、予約なしでいらした方は、長時間お待たせすることとなり、朝いらして夕方の診察となってしまうこともあります。 より安全で正確な診療のためにも、初診・再診とも必ず予約をとって下さいます様、ご協力をお願いいたします。 現在、他の医療施設にて治療中で当院への転院を希望されている方の受診について ~まずはセカンドオピニオン外来でご相談下さい~ がん研究会有明病院 乳腺センターでは、当院にて乳がんの手術治療を行った患者さんに対し、術後の経過観察・薬物療法・放射線療法を行い、その後再発した方には再発治療を行っております。また、他の医療施設で治療中の方に対しては、セカンドオピニオン外来に
9月24日、川島なお美さんが胆管がんで54歳にして亡くなった。川島さんが胆管がんと診断されたのは昨年8月のことだが、その翌月に近藤誠医師のセカンドオピニオン外来を訪れていたことがわかった。 近藤誠医師といえば、手術も抗がん剤も患者にとって有害だとする「がん放置療法」で知られる。他臓器に転移しないがんを「がんもどき」と名づけ、治療せずに放っておいた方が長生きできるというのだ。 そんな近藤医師から川島さんはどんなセカンドオピニオンを受けたのだろうか。取材にあたり、近藤医師は患者のプライバシーに関わること、亡くなった人に対する守秘義務は生じないことを説明した上で、「話しておかなくてはならないことがある」と取材に応じてくれた。 「テレビの報道を見ていると、もっと早く手術していればとか、抗がん剤治療を受けていれば助かったのに、という趣旨のコメントが目立ちます。これでは視聴者が誤った認識に誘導されてし
前回のブログ記事が賢明な多くの方に受け入れて貰えたようで、この場を借りて感謝申し上げます。 さて、問題の川島なお美さん記事リリースと時を合わせて、「文藝春秋11月臨時増刊」という形でも、やはり近藤誠氏がメインとして扱われています。この風景は、どう見ても、文藝春秋×近藤誠氏の強固な「利益相反」を宣言する狼煙を上げているようにしか見えません。 話は変わりますが、ジャーナリズムの使命(ミッション)とは、事実 (ファクト) を正しいベクトルで正しく報道することだと個人的には思っています。ところが、例えば「従軍慰安婦捏造」記事にみられた、信じ難い虚偽報道問題に対して、まともな謝罪もない某メディアは、いまだにこの国を貶めるような姿勢を相も変わらず崩そうとはしません。一体、どこの国の報道機関なのでしょか。 そして、これとまさしく同様なふるまいを示し続けているのが、近藤誠氏です。 「日本の医師はレベルが低
文藝春秋 (十一月号) に、またもや亡くなられてから声をあげる常套手段で、故 川島なお美さん の記事が掲載されました。「法律上、亡くなった方は医師の守秘義務の対象ではなくなりますが~」という前提を置いているようですが、亡くなられた川島さんの個人情報をベラベラと公にするのは倫理的にいかがなものでしょうか。 そして驚いたのは、「肝内胆管がん」と最初に診断されてから間もなくして、なんと近藤氏のもとを訪れ、セカンドオピニオンを求めたというのです。記事の内容は、相も変わらず持論をうまく外挿しながら、医師でありながら非医学的な「観念」の連打を繰り返しています。 同様な病気を患われた方がこの記事の誤った情報に引っ張られないためにも、このブログで糺してみたいと思います。 その前に、川島なお美さんの訃報が流れたタイミングで様々な専門性を持った医師たちがメディアを介して盛んにコメントをされていました。しかし、
大津秀一 オフィシャルブログ 「医療の一隅と、人の生を照らす」 Powered by Ameba 早期緩和ケア大津秀一クリニックで、早期からの緩和ケア外来・相談・診察を東京都文京区目白台で行う緩和ケア医・緩和医療専門医の大津秀一のAmebaオフィシャルブログです。「死ぬときに後悔すること25」作者。遠隔・オンライン診療に対応です。 これまで医師が、お亡くなりになった方の実名を挙げて、その方が亡くなって間もなく月刊誌あるいは週刊誌上で診療内容を述べる、ということは聞いたことがありません。 いかに刑法でそれが罰せられないとしても、社会通念上、相当に倫理的問題があることだと思います。 診療内容をそれこそご本人の同意という重要なプロセスを抜きに、逝去後に公にすること、そしてそれはご遺族の同意も得ているのだろうかということ。 なにせ診察は一対一で行われたようですから、書面での「診療内容を私の死後に実
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