人間存在の本質 『宇宙からの帰還』に代表されるように、立花先生の仕事は、「科学」(主知主義)を補助線に、人間存在の本質に迫っていこうとするところに特徴があった。 若い頃、イスラエルと中東で取材した立花先生はとくに原始キリスト教に強い関心を抱いていたが、キリスト教に迫るための補助線は、そう簡単には見つからなかった。結局先生の最後の大きな仕事になったのは『天皇と東大』だった。「東大」という主知の牙城を補助線に、「天皇」という日本精神の根幹に迫ろうとしたのだ。 立花先生は、溢れるほどの詩情の人でもあった。 きわめて主知的な人間がその能力をフルに発揮して考え抜くことで、「神」や「あの世」のような深遠に到達できるというロマンを持っていた。 そしてそれが、多くの読者を惹きつけた。『宇宙からの帰還』のあとがきに「自分も宇宙体験がしたいと痛切に思った」と書いているように、自分のような人間が宇宙にいけば、必