「何でこんなに歩留まりが高いんですか」。およそ10年前、半導体生産の不具合解析に携わるソニーコンピュータサイエンス研究所(東京都品川区)シニアリサーチャーの高安秀樹は、東芝の技術者から不思議そうに尋ねられた。ソニーと米IBM、東芝が共同開発した高性能中央演算処理装置(CPU)チップ「セル」の生産で、ソニーは常に他社より数%高い歩留まりを達成していた。 その秘訣(ひけつ)は、今で言うビッグデータ(大量データ)分析。製造時に出る100万ほどの全てのデータを取得し、不具合の原因を装置や加工レベルで特定して対策を講じる生産改善活動「ステルスプロジェクト」を実施した。しかし「セル」はゲーム機「プレイステーション3」以外の用途拡大に失敗。大規模な損失を生んだ。 そして現在。高感度相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサーの成功で、半導体事業は成長けん引事業に位置付けられるようになった。世界シェアは