あの原発事故で被ったトラウマ(精神的外傷)は今も消えていない。香山リカさんは、精神科医として、東京電力福島第一原発事故が日本人に与えた影響を、そうみている。たしかに長い時を経た今もなお、世論調査では再稼働反対が多数を占める。このトラウマを克服するには、原発そのものをなくさないといけない。そう思って香山さんは脱原発運動にかかわっている。 ――原発事故は私たちにどんな衝撃を与えた、と言えるのでしょうか。 「大きな心理的なショックが与えられました。地震の揺れの後、津波のニュースに目が行きましたが、途中から福島第一原発で電源が喪失しているとの情報が入ってきて、原発は電源を喪失すると、まずいんだと初めて気付きましたよね。 そうこうしている間に(原子炉建屋が)爆発する映像です。リアルタイムで多くの人が心理的ダメージを受けたと思います」 「その地域だけでなく、ほとんど日本全体が、いわゆる『急性ストレス障