はじめての寝言は生まれて三年たったある嵐の日のことだった、というのを生まれて六年ほどたった頃、母親から聞かされた。生まれて三年の私は、まだひとりっこだった。妹が生まれたのはそこから五年ほど経った頃で、さらに十五年ほど過ぎたあたりから、現在に至るまで南の角部屋で暮らしている。 その部屋に、三歳の頃の私は眠っていた。ひとりで眠っていたわけではないと思う。なにしろ生まれて三年だ。なにかと手のかかる頃だろうし、その、はじめての寝言をきかれていた、ということが、部屋には母もいたことの証拠になるのではないか。きっと夏だ。タオルケットをかけ、自分の息でしめった枕にほほを埋めて、眠っていた、その光景を、私は自分の眼で見たかのように思い出すことができる。外は嵐だった。 しかし、うつぶせでしか眠れない子だった、というのもいつだったか母親から聞かされた話だし、そもそも私がほんとうに、その寝言をいったのかどうか、