森久男『日本陸軍と内蒙工作 関東軍はなぜ独走したか』講談社選書メチエ 今日、会社でこの本を読んでいて次の部分にウギャッとなった。 五月一日、田代皖一郎中将が支那駐屯軍司令官に就任した。佐賀閥である田代は、参謀本部支那課長や中国公使館付武官を歴任した古参の支那通で、八月に同軍参謀長に着任した橋本群少将とともに、中国に対して穏健な考えをもっていた。八月二三日、田代は川越茂大使と会見し、華北工作を差し控える方針を伝達している。 二七日、板垣参謀長一行は天津に到着した。板垣参謀長は軍司令官官邸で田代軍司令官と会見し、緩遠における視察状況を報告した。二八日、軍司令官官邸で関東軍と支那駐屯軍の合同幕僚会議が開かれ、支那駐屯軍から田代軍司令官・橋本参謀長・河辺正三旅団長・重要幕僚等が参加した。板垣参謀長は華北・綏東の状況と緩遠出張の経過を説明し、橋本参謀長は翼察の現況を説明した。二九日、会議を終えた板垣