「精神医学の歴史を繙くと,気分障害とみなされる病態は,ヒポクラテスの時代から記述があり,古くより知られたものであった」(『気分障害』序文より)――。当時は経過予後も良好であったというが,2千年の時を経て,現在わが国の患者数は300万人と推計され,薬物抵抗性の難治症例も多い。 時代や世相の映し鏡ともいえる気分障害。21世紀初頭の今,気分障害の病態をどのように捉えればよいのだろうか。医療者は最新の薬物治療・心理療法を行いながら,社会的なリソースといかに連携して患者をサポートする必要があるのだろうか。 本紙では日本うつ病学会発足の中心的役割を果たされ,このほど発刊された『気分障害』の編集を務められた3名の専門家に,最新の病態と治療戦略についてご議論いただいた。 第5回日本うつ病学会総会(7月25-26日,アクロス福岡)を間近に控え,気分障害を取り巻くトピックスについて再考していただく機会としたい