1986年にノーベル化学賞を受賞した李遠哲博士は、戦前の36年(昭11)に日本統治下の台湾で生まれた。受賞時は台湾と米国の二重国籍だが、出生時は日本国籍だった。 2008年の物理学賞の南部陽一郎博士、14年の物理学賞の中村修二博士は、ともに米国籍で受賞したことで知られる。ただ日本で業績を上げたこともあり、普通は日本人受賞者としてカウントする。 今年の文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏は日本人の両親を持ち、生まれは長崎。5歳で渡英し、作家デビューの翌年に国籍取得した日系英国人とされる。 ところが賞を授与するノーベル財団の見解は異なり、出生地主義をとる。つまり文学賞は川端康成氏、大江健三郎氏に続いて3人目。各賞合計の日本の受賞者は25人とウェブサイトに明示している。 台湾の李博士がもし戦前、内地で生まれていれば日本人に数えていたわけだ。やや不自然な感もするが、欧州は歴史的に国の盛衰や国境線変更