(CC さくらのストーリーに大幅に言及していますので、 アニメや原作をこれから見ようという方はご注意下さい) 〈日本人〉〈卒業〉の暗喩である「さくら」という名を持つ少女の物語 [1] は 20世紀最後の年に完結した。本稿では、「近代とは日本人が〈子供〉から〈大人〉になる過渡期としての〈少女期〉だった」[2] という仮説を前提に、一世紀に渡って問われ続けた「日本人はいかにして近代を卒業しうるか」という問いに対して、戦後サブカルチャーの一つの集大成であるこの物語の中に用意された答を幻視する。 ヨーロッパとアジア 『カードキャプターさくら』で主人公の木之本桜が使う「クロウカード」は、 上部に日本語・下部に英語が記された二言語併記となっている。 この、「上が日本・下が西洋」という配置から、 和風屋根を西洋建築の躯体に載せた帝冠様式を連想したのは筆者だけだろうか。 クロウ・リードがイギリス人と中国人