自分の幼い頃、平仮名の書いてあるブロックを組み合わせて単語を作れる知育玩具が家にあったらしい。 「あんたはまだ文字も教えてなかったのに、そのブロックで『これが私の名前!』と自分の名前を並べてみせたので皆びっくりした」というのが、自分の幼少時を語る時のうちの母親の十八番だった。 実際小さい頃から本が大好きで、言葉は遅かったのに読み書きの上達はめっぽう早かったという。3つ年下の妹は逆に、読み書きはからっきしだが愛想が良くてぺらぺら喋るという対照的な育ち方をしていたようだ。 独りで勝手に文字を覚えられるわけも無いから、長い事「母親が見てない隙に父親が教えたんだろう」と勝手に思っていた。 子供にも育児にも全く無関心で、女遊びや散財に現を抜かした挙句家を出て行った父親がそんな事をするとも信じがたかったけれど、父方の祖父母は遠方、母方の祖父母は早世しており、他にあてが思いつかなかったので。 そうしたら
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