闘病中にもかかわらず、将棋のアマチュア大会に参加し続ける天野貴元さん=東京都八王子市で(梅津忠之撮影) 「闘病が僕の将棋を変えた」。東京都八王子市の天野貴元(よしもと)さん(29)は、がんと向き合いながら将棋を指し続ける。プロ養成機関の奨励会に十五年在籍しながら夢破れ、アマチュアに転身した。直後に見つかった舌がん、そして肺への転移。次々と襲いかかる困難にも諦めることなく、新たな夢を追う。(樋口薫) 将来の夢は名人-。それも、決して不可能な夢ではないと信じていた。六歳で将棋を始め、羽生善治名人も通った名門「八王子将棋クラブ」で頭角を現した。「天才の再来」と期待され、十歳で奨励会入り。しかし、通過点のはずだった三段リーグで伸び悩んだ。